野球中継を見ていると耳にする「防御率」という言葉。
この数値が投手を評価する上でとても大切な指標であることは知っていても、その正確な意味や見方、詳しい計算方法まで把握している方は意外と少ないかもしれません。
防御率は低いほうがいいのか、それとも高い方がいい場面もあるのか、一流の基準やプロの平均はどれくらいなのか、といった疑問も浮かびますよね。
この記事では、野球初心者の方にも分かりやすく、防御率の基本的な意味から、具体的な計算、プロ野球における目安、さらには歴代ランキングや少し意外なワースト歴代記録まで、野球の防御率とは何かを網羅的に解説していきます。
この記事を読むことで、以下の点について理解が深まります。
- 防御率の基本的な意味と簡単な計算方法
- 防御率が良い投手・悪い投手の具体的な目安
- プロ野球における平均値や歴代ランキングなどのデータ
- 防御率という指標から投手の実力を正確に読み解く見方

初心者向けに解説!野球の防御率とは?

- 防御率の基本的な計算方法
- 防御率は低いほうがいい投手なの?
- 防御率の簡単な見方を解説
- プロ野球での防御率の目安
- 一流投手とされる防御率の基準
防御率の基本的な計算方法
防御率(ERA: Earned Run Average)とは、その投手が1試合(9イニング)を投げたと仮定した場合、平均してどれくらいの自責点に抑えられるかを示す指標です。
計算方法は公認野球規則にも定められており、以下の式で算出されます。
防御率 = 自責点 × 9 ÷ 投球回数
ここでのポイントは「自責点」という部分です。
自責点とは、ヒットや四死球、自身の暴投などが原因で、投手の責任によって与えた失点を指します。
つまり、味方の野手のエラー(失策)や捕手のパスボール(捕逸)が絡んだ失点は、投手の責任ではないため自責点には含まれません。
なぜ最後に「9」を掛けるのかというと、野球の基本的な試合イニング数が9回だからです。
これにより、異なる投球回数の投手同士でも「1試合投げたら何点取られるか」という共通の物差しで比較できるようになります。
例えば、183回と1/3を投げて自責点が41だった投手の場合、計算式は「41 × 9 ÷ 183.33…」となり、防御率は2.01となります。
防御率は低いほうがいい投手なの?
防御率は数値が低ければ低いほど、失点を許さない優秀な投手であると言えます。
野球は相手より失点を少なく抑えることで勝利に近づくスポーツですから、失点に直結するこの指標は投手の能力を測る上で非常に分かりやすいものです。
例えば、防御率が1.00の投手は、9イニングを投げても平均1点しか取られない計算になります。
一方で防御率が4.00の投手は、同じく9イニングで平均4点を取られてしまうことを示唆します。
チームの打線が毎試合3点しか取れない場合、前者の投手が投げれば勝利の可能性は高まりますが、後者の投手が投げると敗戦が濃厚になると考えられます。
このように、防御率は投手の「失点を防ぐ力」を直接的に表しており、チームを勝利に導く能力の根幹をなす指標のため、低い数値が常に高く評価されます。
防御率の簡単な見方を解説
複雑な計算式を見ると難しく感じてしまうかもしれませんが、防御率を直感的に理解する簡単な見方があります。
それは、数値をそのまま「その投手が1試合を投げきったら、だいたい何点くらい取られるか」というイメージで捉えることです。
例えば、ニュースで「防御率2.50」と紹介されている投手がいれば、「このピッチャーは1試合投げると2点か3点くらいに抑えてくれるんだな」と考えると、その実力が非常にイメージしやすくなります。
同様に、「防御率1.80」なら「2点も取られないなんて、すごい!」となり、「防御率4.20」なら「ちょっと打たれ気味で、4点くらいは覚悟しないといけないのかも」といった具合です。
この見方を覚えておくだけで、投手成績の一覧を見たときに、誰が安定して試合を作れる投手なのかが一目で判断できるようになります。
野球観戦がより深く、面白くなるコツの一つです。
プロ野球での防御率の目安
防御率の数値が持つ意味を、プロ野球の世界における一般的な評価と照らし合わせると、より具体的に投手のレベルを把握できます。
もちろん時代やリーグの打撃レベルによって多少の変動はありますが、概ね以下の表のような目安で評価されることが多いです。
防御率 | 評価の目安 | 投手のレベル |
1点台 | 超エース級 | 球界を代表する存在。年間タイトル(最優秀防御率)の最有力候補。 |
2点台 | トップクラス | チームのエースや、勝利の方程式を担う優秀なリリーフ投手。 |
3点台 | 合格ライン | 先発ローテーションを1年間守る投手として、十分な成績。 |
4点台 | やや課題あり | ローテーション投手としては少し物足りず、打線の援護が不可欠。 |
5点台以上 | 苦しい内容 | 1軍レベルでは通用しているとは言い難く、改善が求められる。 |
ざっくりと「2点台ならエース級、3点台なら十分な戦力」という感覚を持っておけば、試合前の投手紹介やシーズン成績を見る際に、その投手の立ち位置をすぐに理解できるでしょう。
一流投手とされる防御率の基準

前述の目安の中でも、特に「一流」や「エース」と呼ばれる投手の基準はどこにあるのでしょうか。
多くの専門家やファンの間では、シーズンを通して防御率が2点台前半以下であることが、その一つの基準と考えられています。
特に、防御率が1点台というのは、年間を通じて圧倒的な投球を続けた証であり、最優秀防御率のタイトルを獲得する投手の多くがこの領域に達します。
これは、ほぼ全ての試合でクオリティ・スタート(6回以上を投げて自責点3以内)を達成するレベルの安定感がなければ実現不可能な数字です。
また、先発投手だけでなく、試合の終盤を締めるリリーフ投手にとっても防御率は重要です。
彼らは短いイニングを完璧に抑えることが求められるため、一流のリリーフ投手は防御率が1点台、あるいは0点台という驚異的な成績を残すことも珍しくありません。
数字で見る野球の防御率とは?データで比較

- プロ野球における防御率の平均は?
- 歴代の防御率ランキングを紹介
- 防御率のワースト歴代記録とは?
- 打者から見て防御率が高い方がいい理由
- まとめ:野球の防御率とは何かを理解しよう
プロ野球における防御率の平均は?
個々の投手の成績を見る上で、リーグ全体の平均値を知っておくことは比較の物差しとして役立ちます。
プロ野球のリーグ平均防御率は、その年の「投高打低」あるいは「打高投低」といった傾向によって変動します。
例えば、近年(2020年代前半)の日本プロ野球(NPB)では、セ・リーグ、パ・リーグともにリーグ平均防御率はおおむね3点台前半から中盤で推移することが多いです。
仮にリーグ平均が3.30だとすれば、防御率2点台の投手は平均よりもかなり優秀であり、逆に4点台の投手は平均を下回っていると客観的に評価できます。
また、使用するボールや球場の広さ、ルール変更などによってもリーグ平均は大きく変わるため、異なる時代の投手の防御率を比較する際には、その時代のリーグ平均を考慮に入れると、より公平な評価が可能になります。
歴代の防御率ランキングを紹介
プロ野球の長い歴史の中では、信じがたいほどの好成績を残した投手たちがいます。
ここでは、参考としてNPBの通算記録およびシーズン記録における歴代防御率ランキングの一部を紹介します。
通算防御率ランキング(投球回2000以上)
順位 | 選手名 | 防御率 |
1 | 藤本 英雄 | 1.90 |
2 | 野口 二郎 | 1.96 |
3 | 若林 忠志 | 1.99 |
4 | 村山 実 | 2.09 |
5 | 別所 毅彦 | 2.18 |
シーズン防御率ランキング(規定投球回以上)
順位 | 選手名 | 所属球団 | 年度 | 防御率 |
1 | 藤本 英雄 | 巨人 | 1943 | 0.73 |
2 | 村山 実 | 阪神 | 1970 | 0.98 |
3 | 野口 二郎 | 大洋 | 1942 | 1.19 |
※所属球団は当時のものです。
このように、歴代の名投手たちは通算でも2.00前後、シーズン記録に至っては0点台という、現代の野球では考えられないような圧倒的な数字を残しています。
これらの記録は、当時の野球環境を考慮しても、彼らの傑出した能力を物語っています。
防御率のワースト歴代記録とは?
輝かしい記録がある一方で、不名誉ながらワースト記録も存在します。
シーズン規定投球回に到達した投手の中でのワースト記録は、その年のリーグがいかに打高投低であったか、あるいはその投手がどれだけ苦しんだかを示すデータとなります。
例えば、1950年代や1970年代など、特定のシーズンではリーグ全体の打撃レベルが非常に高く、多くの投手が防御率を悪化させました。
シーズンワースト記録としては、6点台や7点台といった数字が記録されています。
ただし、これらのワースト記録は単に投手の能力が低いことを示すだけではありません。
それだけ打ち込まれながらも、監督が信頼してシーズンを通して投げさせ続けた結果とも言えるため、その背景には様々なチーム事情があったと推察されます。
記録を見る際は、そうした側面も考慮すると、また違った見方ができるかもしれません。
打者から見て防御率が高い方がいい理由
これまで投手の視点で「防御率は低いほうがいい」と解説してきましたが、視点を180度変えて、打者の立場から考えてみましょう。
打者にとって、対戦する相手投手の防御率は「高い方がいい」に決まっています。
なぜなら、前述の通り、防御率はその投手がどれだけ失点しやすいかを示す指標だからです。
防御率5.00の投手は、9イニング投げれば平均5点を取られる計算になります。これは、打者から見れば「得点するチャンスが大きい投手」と言い換えられます。
つまり、打者や攻撃側のチームは、相手先発投手の防御率を見て、「今日は打撃戦に持ち込めそうだ」とか「この投手からは点を取るのが難しいから、少ないチャンスをものにしないといけない」といった戦略を立てるわけです。
このように、防御率は相手チームから見た場合の「攻略のしやすさ」を示す指標にもなるのです。
まとめ:野球の防御率とは何かを理解しよう

今回は、野球の防御率について、その基本的な意味から具体的なデータまで詳しく解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
- 防御率は投手の失点しやすさを示す指標
- 1試合(9イニング)あたりの自責点で計算される
- 計算式は「自責点 × 9 ÷ 投球回数」
- 数値が低いほど優秀な投手と評価される
- エラーによる失点は自責点に含まれない
- 1点台は球界を代表する超エース級
- 2点台はチームのエース級の実力
- 3点台が先発ローテーション投手の合格ライン
- 4点台以上は課題が残る成績
- 「1試合で何点取られるか」でイメージすると分かりやすい
- プロ野球のリーグ平均は時代により変動する
- 勝利数と違い投手の純粋な能力を測りやすい
- WHIP(1イニングあたりの被出塁数)とも相関性が高い
- 歴代には0点台という驚異的な記録も存在する
- 防御率を知ると野球観戦がより一層楽しくなる
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