プロ野球選手の躍動感あふれるプレーの中でも、一瞬で塁を駆け抜けるスピードは観る者を魅了します。
特に「プロ野球の50m走ランキング」というテーマは、ファンの間で常に熱い議論を呼ぶトピックの一つです。5秒台前半という、陸上のトップアスリートに匹敵する驚異的なタイムが並ぶ一方で、その記録の信憑性に疑問を持つ方も少なくありません。
一体、プロ野球の50m走の平均タイムはどのくらいなのでしょうか。
また、現役選手の足速いランキングや、球史を彩ってきた歴代の俊足ランキングには、どのような選手が名を連ねるのでしょうか。そして究極の疑問として、本当にプロ野球で一番足が速い選手は誰なのでしょうか。
この記事では、公表されているプロ野球選手の50m走タイムの背景にある「なぜ?」を徹底的に掘り下げます。
単なるランキングの紹介に留まらず、テレビ番組での客観的な検証データや、タイムだけでは測れない「野球における本当の速さ」とは何かを、多角的な視点から解き明かしていきます。
- プロ野球選手の50m走タイムの信憑性
- 陸上選手と比較した本当の速さ
- 現役選手と歴代選手の俊足ランキング
- タイムだけでは測れない走塁の重要性
プロ野球50m走ランキングの信憑性

- プロ野球の50m走の平均タイム
- プロ野球で1番足が速い選手は誰か
- 小深田大翔の50mのタイムと実力
- 俊足の周東は50m走ランキングに入る?
- サッカー浅野拓磨の50メートルは何秒?
プロ野球の50m走の平均タイム
プロ野球選手の身体能力を示す指標として頻繁に引用される50m走のタイムですが、「公式な平均タイム」というものは存在しません。これは、計測が各球団に委ねられており、その方法も統一されていないためです。
多くのタイムは春季キャンプ中に計測されますが、そのほとんどがコーチなどによる「手動計測」です。陸上競技のようにスターターピストルと連動した電子計測システム(光電管)を用いるわけではありません。
計測者はランナーの動きを見てからストップウォッチを押すため、どうしても0.1秒から0.2秒程度の誤差が生じ、機械計測よりも速いタイムが出やすい傾向にあります。
手動計測でタイムが速く出やすい理由
- 計測者の反応の遅れによる誤差
- 統一されていないスタートの合図
- グラウンド(土や芝)と陸上トラックの素材の違い
これらの背景から、多くの選手が5秒台という驚異的な記録を申告していますが、これはあくまで参考記録として捉えるのが賢明です。
もし統一された条件下で計測した場合、プロ野球選手の平均的なタイムは6秒前半から中盤に収まる可能性が高いと考えられます。
野球は単なる直線走の速さだけでなく、緩急をつけた走りやスライディング技術も求められるため、50m走のタイムは選手の持つ多様な能力の一側面に過ぎないのです。
プロ野球で1番足が速い選手は誰か
「プロ野球で1番足が速い選手は誰か」という問いは、ファンの探求心をくすぐる永遠のテーマです。
しかし、この問いに答えるのは非常に難しいのが現実です。なぜなら、公表されている50m走のタイムには、前述の通り計測方法にばらつきがあり、そのまま比較することができないからです。
特筆すべきは、陸上男子50m走の日本記録が、朝原宣治さんが2002年に記録した5秒75であるという事実です。
これは、100mを10秒フラットで走るトップクラスのスプリンターが出す記録です。にもかかわらず、プロ野球界では5秒台前半から中盤のタイムを持つ選手が複数存在しており、これは走りの専門家である陸上選手に匹敵するか、あるいは凌駕する記録ということになります。
野球選手は打撃、投球、守備など多岐にわたるトレーニングを積んでおり、スプリント能力だけに特化しているわけではありません。
この点を考慮すると、公表されているタイムの信憑性には、やはり疑問符が付くと言わざるを得ないでしょう。したがって、タイムだけで「1番速い選手」を断定することはできず、より客観的なデータや実戦でのパフォーマンスを基に判断する必要があります。
小深田大翔の50mのタイムと実力
球界を代表するスピードスターの一人、東北楽天ゴールデンイーグルスの小深田大翔選手。彼の公称50m走タイムは5秒9とされています。これだけでも十分に俊足ですが、彼の真の速さを知る上で非常に興味深いデータがあります。
毎年オフシーズンに放送されるテレビ番組「超プロ野球ULTRA」内の企画で、プロ野球選手と陸上選手が50m走で直接対決する「ULTRAスプリントマッチ」というコーナーがあります。
2021年の大会に小深田選手も出場し、その結果は6秒49でした。公称タイムと比較すると約0.6秒の差がありますが、これは不慣れな環境やスタート方法の違いも影響したと考えられます。
重要なのは、この企画が公平な条件下で行われたという点です。彼の記録は、プロ野球選手のスピードが単なる自己申告のタイムだけでなく、客観的なデータによっても裏付けられていることを示しています。
順位 | 選手名 | 所属 | タイム |
---|---|---|---|
1位 | 小池祐貴 | 陸上 | 6秒065 |
2位 | 桐生祥秀 | 陸上 | 6秒069 |
3位 | 塩見泰隆 | ヤクルト | 6秒31 |
4位 | 和田康士朗 | ロッテ | 6秒43 |
5位 | 小深田大翔 | 楽天 | 6秒49 |
6位 | 松原聖弥 | 巨人 | 6秒98 |
この結果を見ても、陸上のトップ選手との差は歴然ですが、参加した野球選手の中では僅差の戦いでした。小深田選手の俊足は、こうした企画だけでなく、実際の試合での積極的な走塁や広い守備範囲として、チームの勝利に大きく貢献しています。
俊足の周東は50m走ランキングに入る?
福岡ソフトバンクホークスの周東佑京選手は、その規格外のスピードで「走塁の神様」とも称される存在です。
彼の名を世界に轟かせたのは、2023年に開催されたWBC準決勝、メキシコ戦でのサヨナラのホームインでしょう。一塁走者だった周東選手は、吉田正尚選手の二塁打で一気に本塁生還を果たし、日本を決勝へと導きました。
WBCで見せた「神の足」
あの場面で一塁から迷わずホームを陥れることができたのは、周東選手のトップスピードだけでなく、瞬時の状況判断能力と走塁技術の高さがあったからです。彼の走りは、単なる速さを超えた「勝負を決めるスピード」と言えます。
そんな周東選手の公称50m走タイムは5秒7とされています。これは陸上の日本記録に肉薄する、まさに驚天動地の記録です。もしこのタイムが電子計測された正確なものであれば、彼は議論の余地なくプロ野球界のスピードキングと言えます。
しかしながら、この記録もまた手動計測による参考値である可能性が高いと考えるのが自然です。とはいえ、記録の真偽を問うまでもなく、彼の試合におけるスピードが本物であることは、全ての野球ファンが知るところです。
彼の真価は、50mという決められた距離のタイムではなく、ベースランニングという野球特有の動きの中で発揮される「実戦的な速さ」にあるのです。
サッカー浅野拓磨の50メートルは何秒?
野球選手の速さをより客観的に評価するため、他のスポーツのアスリートと比較してみましょう。例えば、サッカードイツ・ブンデスリーガで活躍し、日本代表としてもその快足で知られる浅野拓磨選手は「ジャガー」の愛称で親しまれています。
彼の50m走のタイムは5秒9であると言われています。トップレベルのスピードが求められるサッカー界で最速クラスの選手がこのタイムであることを踏まえると、プロ野球界で公称されている5秒台前半から中盤の記録がいかに突出しているかが理解できるでしょう。
もちろん、競技特性が異なれば、求められるスピードの質も変わってきます。
- 野球: 塁間(約27.4m)という短い距離での爆発的な加速力、トップスピードへの到達の速さが重要。
- サッカー: 試合を通して何度もスプリントを繰り返す持久力、ボールをコントロールしながらのスピード、急な方向転換のアジリティが重要。
このように、単純なタイム比較はできませんが、他競技のトップアスリートの記録は、プロ野球選手の公称タイムを評価する上での一つの良い物差しとなります。
いずれにせよ、プロ野球の俊足選手たちが、極めて高いレベルの身体能力を持っていることは紛れもない事実です。
速さを検証!プロ野球50m走ランキング

- 現役選手のプロ野球足速いランキング
- 歴代のプロ野球俊足ランキング
- 50mタイム以外の足速いランキング
- プロ野球で一番足が速い選手を考察
- 総括:プロ野球50m走ランキングの真実
現役選手のプロ野球足速いランキング
ここでは、公称タイムに基づいた現役選手の50m走ランキングをご紹介します。何度も繰り返しますが、これらのタイムは各球団が独自に手動計測したものであり、あくまで参考記録であるという点を十分にご理解の上、ご覧ください。
順位 | 球団名 | 名前 | 50m走タイム |
---|---|---|---|
1 | ヤクルト | 並木秀尊 | 5.32秒 |
2 | 日本ハム | 五十幡亮汰 | 5.42秒 |
3 | ソフトバンク | 柳田悠岐 | 5.55秒 |
4 | ロッテ | 荻野貴司 | 5.6秒 |
5 | ロッテ | 福田秀平 | 5.6秒 |
6 | ソフトバンク | 周東佑京 | 5.7秒 |
7 | ロッテ | 高部瑛斗 | 5.78秒 |
8 | ロッテ | 和田康士朗 | 5.8秒 |
9 | 巨人 | 松原聖弥 | 5.8秒 |
10 | 楽天 | 小深田大翔 | 5.9秒 |
ランキング上位には、ヤクルトの並木秀尊選手や日本ハムの五十幡亮汰選手といった、現代プロ野球を代表する快足選手が名を連ねています。
特に並木選手の5.32秒というタイムは大学時代に記録されたものですが、前述のテレビ番組企画で陸上選手に迫る6秒06を記録しており、そのスピードがフロックでないことを証明しています。
また、「サニブラウンに勝った男」として知られる五十幡選手も、その異名に恥じないスピードで常に相手チームの脅威となっています。このランキングは、選手のポテンシャルを示す一つの指標として、非常に興味深いものと言えるでしょう。
歴代のプロ野球俊足ランキング
プロ野球70年以上の歴史の中では、数々の伝説的なスピードスターがファンを沸かせてきました。ここでは、球史に名を刻んだレジェンドたちの公称タイムを基にしたランキングを見てみましょう。
歴代プロ野球選手50m走ランキング(公称タイム)
順位 | 球団名 | 名前 | 50m走タイム |
---|---|---|---|
1 | DeNA | 早川大輔 | 5.3秒 |
2 | ロッテ | 早坂圭介 | 5.5秒 |
3 | DeNA | 田中一徳 | 5.6秒 |
4 | 阪神 | 赤星憲広 | 5.6秒 |
5 | 広島 | 赤松真人 | 5.6秒 |
この中でも特に異彩を放つのが、通算1065盗塁というアンタッチャブルな世界記録を持つ福本豊さんです。
彼は「世界の盗塁王」としてあまりにも有名ですが、実は彼の50m走タイムは6秒前半と、このランキングに名を連ねる選手たちの中では決して速い方ではありませんでした。
ではなぜ、彼は前人未到の記録を打ち立てることができたのでしょうか。その答えは、彼の探究心にあります。福本さんは当時まだ珍しかった8mmフィルムを駆使して、相手投手の投球フォームやクセを徹底的に分析。
「この投手は、このモーションなら牽制はない」ということを見抜き、完璧なスタートを切っていたのです。彼の功績は、野球における走塁が、単なる身体能力だけでなく、観察眼や分析力といった知性も重要であることを雄弁に物語っています。
50mタイム以外の足速いランキング
プロ野球における選手の「本当の速さ」を評価するために、専門家やスカウトが50m走のタイム以上に重視する指標があります。それが「ベースランニングタイム」、特に打席から一塁ベースまでの到達タイムです。
このタイムは、打撃後の加速力、走塁ルートの効率性、ベースへの駆け抜け方など、野球の実戦に即したスピードを総合的に示すものです。一般的な基準として、俊足と言われる目安は以下の通りです。
- 右打者: 4.30秒未満
- 左打者: 4.00秒未満
左打者の方が一塁ベースに近く、スイングの勢いが自然と一塁方向へ向かうため、右打者よりも速いタイムが出やすくなります。アマチュア時代に計測された、現在のプロ野球を代表する俊足選手たちのタイムは、まさに圧巻です。
俊足選手の一塁到達タイム(アマチュア時代)
選手名 | 所属 | 一塁到達タイム | 特記 |
---|---|---|---|
五十幡亮汰 | 日本ハム | 3.76秒 | 左打者 |
小深田大翔 | 楽天 | 3.80秒 | 左打者 |
辰己涼介 | 楽天 | 3.81秒 | 左打者 |
藤原恭大 | ロッテ | 3.83秒 | 左打者 |
島田海吏 | 阪神 | 3.85秒 | 左打者 |
周東佑京 | ソフトバンク | 3.85秒 | 左打者 |
並木秀尊 | ヤクルト | 3.88秒 | 右打者 |
特に注目すべきは、右打者でありながら3.88秒という驚異的なタイムを記録している並木秀尊選手です。これらのデータは、50mのタイムでは見えてこない、野球特有のスピードを如実に表しています。
プロ野球で一番足が速い選手を考察
これまでの情報を総合すると、「プロ野球で一番足が速い選手は誰か」という問いには、簡単には答えが出せないことがわかります。速さをどの基準で測るかによって、名前が挙がる選手は変わってくるからです。
もし「公称の50m走タイム」を基準とするならば、5.32秒の並木秀尊選手や5.42秒の五十幡亮汰選手が候補となるでしょう。しかし、これらのタイムの信憑性には疑問が残ります。
次に、「客観的に計測されたスプリント能力」を基準とするならば、テレビ番組で陸上選手と競い合い、6秒06という好記録を出した並木選手が最有力候補かもしれません。
しかし、「野球の実戦における速さ」を基準とするならば、話はさらに複雑になります。一塁到達タイムでは五十幡選手がトップクラスの数値を誇ります。
そして、盗塁王・福本豊さんの例が示すように、スタート技術、状況判断、相手の隙を突く洞察力といった「走塁IQ」も速さの重要な要素です。
以上の点を踏まえると、特定の誰か一人を「一番速い」と指名するのではなく、それぞれの選手が持つ「スピードの質」に着目するのが最も的確な捉え方でしょう。
爆発的な加速力を持つ選手、トップスピードの維持能力に長けた選手、そして技術と知性で速さを生み出す選手。それぞれの個性が、プロ野球というスポーツをより深く、面白いものにしているのです。
総括:プロ野球50m走ランキングの真実

この記事では、プロ野球選手の50m走ランキングとその信憑性について、多角的な視点から深掘りしました。最後に、本記事で明らかになった重要なポイントを箇条書きでまとめます。
- プロ野球選手の50m走タイムは主にキャンプで手動計測される
- 手動計測は誤差が大きく、機械計測より速いタイムが出がちである
- そのため、多くの選手が陸上選手に匹敵する5秒台を記録している
- 陸上男子50mの日本記録は5秒75(朝原宣治)
- テレビ番組の企画で陸上選手と野球選手が対決したことがある
- ヤクルトの並木秀尊は6秒06を記録し、その速さを証明した
- ソフトバンク周東佑京の公称タイムは驚異の5.7秒とされている
- 彼の真価はWBCで見せたような実戦での走塁にある
- 歴代盗塁王の福本豊は、50m走のタイム自体は6秒前半だった
- 福本は走力以上に、投手のクセを読む分析力で盗塁を量産した
- 50m走のタイムと野球の走塁技術は必ずしもイコールではない
- 実戦的な速さの指標として「一塁到達タイム」が重視される
- 俊足の目安は右打者で4.3秒未満、左打者で4.0秒未満
- 日本ハムの五十幡亮汰はアマチュア時代に3.76秒を記録している
- 右打者の並木秀尊も3.88秒という驚異的なタイムを持つ
- 「一番速い選手」は、速さの基準によって変わる
- 公称タイム、実測タイム、走塁技術など多角的に見る必要がある
- ランキングは選手のポテンシャルを知るための一つの指標として楽しむのが良い