藤浪晋太郎投手のNPB時代のデットボール数は、通算で55個(2022年シーズン終了時点)
藤浪晋太郎投手のデッドボールは、多くの野球ファンや関係者の間で長らく議論の対象となってきました。
なぜこれほどまでにデッドボールが多いのか、その背景にはどのような要因があるのでしょうか。
この記事では、藤浪晋太郎投手のデッドボールに関する様々な情報を深掘りし、その原因から歴史、世間の評価、そして今後の展望までを徹底解説します。

藤浪晋太郎のデッドボールがなぜ多いのか?その原因と背景を徹底解説
藤浪晋太郎投手のキャリアを通して、デッドボールの多さが指摘されてきました。
この現象には、投球フォーム、精神的な側面、そして身体的な疲労といった複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられます。
制球難はなぜ起こる?藤浪投手の投球フォームと技術的な課題
藤浪晋太郎投手のデッドボールが多い主要な原因として、制球難が挙げられます。
特に右打者の内角への制球に苦しむ傾向が見られました。
これは、彼の投球フォームにおける技術的な課題に起因すると考えられています。プロ1年目の2013年には、左足を三塁側に大きく踏み出すフォームで右打者には強みを発揮したものの、左打者には苦戦しました。
その後、中西清起コーチの助言で左足の踏み出し幅を縮めるなど、フォーム修正に取り組んでいます。
しかし、2017年シーズン以降、疲労の蓄積や筋肉量の増大によって「体の使い方のズレ」が生じ、制球難が深刻化しました。
藤浪晋太郎投手自身も「技術的根拠がなくフィーリングだけでやってきた」ことが原因である可能性に言及しており、本格的な動作解析を通じて、体を正しく操るための技術不足を解消しようと試みています。
ダルビッシュ有選手やクレイトン・カーショウ選手との合同自主トレーニングでも、肉体改造や技術的なアプローチに取り組むなど、常に自身の投球技術向上に意欲的です。
イップスの可能性は?精神的な要因が与える影響
藤浪晋太郎投手の制球難が深刻化する中で、「イップス」の可能性が指摘されることもありました。
イップスとは、精神的なプレッシャーや不安によって、それまでできていた動作が突然できなくなる現象を指します。
特に右打者への頭部死球が乱闘騒ぎに発展したり、二軍戦で危険球退場になったりした経験は、精神的な影響を考慮する上で重要な要素です。
しかし、一部の野球解説者や評論家は、藤浪晋太郎投手の制球難をイップスと断定することに否定的な見解を示しています。
江本孟紀氏は走り込み不足を、桑田真澄氏は技術力不足を、谷繁元信氏や落合博満氏、山本昌氏もメンタル面ではなく技術面の問題であると指摘しています。
藤浪晋太郎投手自身も技術的な課題として認識しており、精神的な問題だけでなく、根本的な技術の確立に焦点を当てています。
登板過多や疲労の影響は?プロ入り後の経緯から考察
プロ入り後の登板過多や疲労の蓄積も、藤浪晋太郎投手の制球難に影響を与えた可能性があります。
高校時代から甲子園での連投やAAA世界野球選手権大会での複数登板など、多くの投球経験を積んできました。
プロ入り後も、ルーキーイヤーから多くのイニングを投げ、特に3年連続2桁勝利を達成した2015年シーズンまでは、多くの登板機会がありました。
2016年シーズン以降、右肩の炎症や体調不良が報じられることもあり、身体的なコンディションが投球に影響を与えた可能性は十分に考えられます。
疲労によってフォームが崩れたり、集中力が低下したりすることで、制球力が不安定になることは少なくありません。特に、体が大きく成長する時期に多くの投球量をこなしたことが、後の体の使い方のズレにつながったという分析もあります。
藤浪晋太郎のデッドボールの歴史:プロ入りからメジャーリーグまで
藤浪晋太郎投手のデッドボールは、そのキャリアを通じて阪神タイガース時代からメジャーリーグ時代にかけて、その数や状況に変化が見られます。
ここからは藤浪晋太郎選手のデットボールの歴史について振り返りをしていきます。
NPB時代のデッドボール数と死球率の推移
藤浪晋太郎投手のNPB時代の死球数は、通算で55個です(2022年シーズン終了時点)。
死球1個あたりの打者数(死球率)を見ると、通算で78打者/死球となっています。この数値は、他の多くのNPB投手と比較しても高い傾向にあります。
2021年シーズンに規定投球回数に達したセ・リーグの投手と藤浪晋太郎投手の死球数を見てみましょう。
投手名 | 防御率 | 打者数 | 死球数 | 死球1個あたり打者数 |
柳裕也(中) | 2.20 | 676 | 3 | 225 |
青柳晃洋(神) | 2.48 | 651 | 3 | 217 |
大野雄大(中) | 2.95 | 566 | 2 | 283 |
森下暢仁(広) | 2.98 | 672 | 3 | 224 |
大瀬良大地(広) | 3.07 | 600 | 5 | 120 |
小笠原慎之介(中) | 3.64 | 615 | 4 | 154 |
西勇輝(神) | 3.76 | 610 | 4 | 153 |
九里亜蓮(広) | 3.81 | 647 | 8 | 81 |
戸郷翔征(巨) | 4.27 | 639 | 6 | 107 |
藤浪晋太郎(神) | 5.21 | 238 | 4 | 60 |
2021年シーズンの藤浪晋太郎投手は打者238人に対して死球4個と、約60打席に1個の割合で死球を出しており、他の投手と比較して多い状況でした。
通算成績で見ても死球1個当たりの打者数は78で、やはり死球率が高いことが分かります。
しかし、パ・リーグの投手と比較すると、藤浪晋太郎選手よりも死球率が高い投手が何名かいます。
投手名 | 防御率 | 打者数 | 死球数 | 死球1個あたり打者数 |
山本由伸(オ) | 1.39 | 736 | 2 | 368 |
宮城大弥(オ) | 2.51 | 594 | 9 | 66 |
上沢直之(日) | 2.81 | 643 | 4 | 161 |
伊藤大海(日) | 2.90 | 610 | 6 | 102 |
田中将大(楽) | 3.01 | 624 | 5 | 125 |
則本昂大(楽) | 3.17 | 584 | 3 | 195 |
今井達也(西) | 3.30 | 682 | 11 | 62 |
石川柊太(ソ) | 3.40 | 653 | 17 | 38 |
加藤貴之(日) | 3.42 | 595 | 3 | 198 |
岸孝之(楽) | 3.44 | 620 | 1 | 620 |
田嶋大樹(オ) | 3.58 | 608 | 5 | 122 |
小島和哉(ロ) | 3.76 | 606 | 6 | 101 |
髙橋光成(西) | 3.78 | 728 | 6 | 121 |
松本航(西) | 3.79 | 638 | 4 | 160 |
こうして見ると藤浪晋太郎選手は死球が多い方ではありますが、「プロレベルじゃない」というのは言い過ぎで、必要以上に「藤浪の死球」が叩かれている可能性が指摘されます。
特に2020年シーズンは、藤浪晋太郎選手にとって死球が少ないシーズンでした。
選手名 | 与死球数 | 投球回 | 投球回/与死球数 |
柳裕也(中日) | 6 | 85 | 14.2 |
髙橋光成(西武) | 7 | 120 | 17.1 |
戸郷翔征(巨人) | 6 | 107.2/3 | 17.9 |
菅野智之(巨人) | 7 | 137.1/3 | 19.6 |
山本由伸(オリックス) | 6 | 126.2/3 | 21.1 |
野村祐輔(広島) | 3 | 70.2/3 | 23.6 |
青柳晃洋(阪神) | 5 | 120.2/3 | 24.1 |
藤浪晋太郎(阪神) | 2 | 76.1/3 | 38.2 |
千賀滉大(ソフトバンク) | 2 | 121 | 60.5 |
大野雄大(中日) | 0 | 148.2/3 | — |
2020年シーズンは76.1/3イニングを投げて死球2個と、死球1個あたりの投球回数は38.2イニングでした。
菅野智之選手(19.6イニング/1個)や山本由伸選手(21.1イニング/1個)よりも死球を出す頻度が少ないことを示しており、過去の「藤浪=死球が多い」というイメージが、必ずしも現状を表しているわけではないことを示唆しています。
メジャーリーグでのデッドボール数と死球率:最新情報
藤浪晋太郎投手は、2023年にオークランド・アスレチックス、ボルチモア・オリオールズでメジャーリーグに挑戦しました。
メジャーリーグでの死球数は、2023年シーズンで7個でした。アスレチックス時代に5個、オリオールズ時代に2個の死球を与えています。
球団 | 登板 | 先発 | 投球回 | 被安打 | 被本塁打 | 与四球 | 与死球 | 奪三振 | 防御率 |
OAK | 34 | 7 | 49.1 | 52 | 6 | 30 | 5 | 51 | 8.57 |
BAL | 30 | 0 | 29.2 | 21 | 3 | 15 | 2 | 32 | 4.85 |
計 | 64 | 7 | 79.0 | 73 | 9 | 45 | 7 | 83 | 7.18 |
メジャーリーグでも、NPB時代と同様に、他の投手と比較してやや高い死球率を示した時期もありましたが、特にオリオールズ移籍後は安定した投球を見せる場面も増え、連続無四球記録を達成するなど、制球が改善された時期もありました。
特に問題となったデッドボール事例とその影響
藤浪晋太郎投手のキャリアにおいて、特に問題視されたデッドボールがいくつか存在します。
2017年シーズンには、右打者の頭部付近への死球が複数回あり、特に甲子園球場での広島東洋カープ戦では、大瀬良大地選手と菊池涼介選手への連続死球が乱闘騒ぎに発展しました。
これらの危険な投球は、相手チームやファンに大きな影響を与え、藤浪晋太郎投手への警戒感を高める結果となりました。
実際に、藤浪晋太郎投手が先発する試合では、相手チームが主力右打者をスタメンから外したり、左の代打を連発したりするケースも見られました。
これらの事例は、彼の制球難が単なる成績上の問題だけでなく、試合の流れや相手チームの戦略、さらには選手の健康にも影響を及ぼす深刻な問題として認識されるきっかけとなりました。
藤浪晋太郎のデッドボールに関する世間の反応と評価
藤浪晋太郎投手のデッドボールは、野球ファン、メディア、そして元プロ野球選手や評論家の間で、常に大きな注目と議論の対象となってきました。
元プロ野球選手や評論家からのデッドボールへの見解
元プロ野球選手や評論家の中には、藤浪晋太郎投手のデッドボールについて、様々な見解を示す人がいました。
前述の通り、江本孟紀氏、桑田真澄氏、谷繁元信氏、落合博満氏、山本昌氏といった多くの専門家は、彼の制球難を精神的なイップスではなく、技術的な問題であると指摘しています。
彼らは、藤浪晋太郎投手が体の使い方や投球フォームにおける根本的な修正を行う必要性を強調してきました。
特に、ダルビッシュ有選手やクレイトン・カーショウ選手との合同自主トレーニングでの肉体改造や技術指導は、この技術的課題克服に向けた取り組みの一環として注目されました。
一方で、藤浪晋太郎投手のデッドボールが、彼の剛速球や潜在能力と相まって、必要以上に注目され、批判の対象になっているという意見もありました。
「プロレベルじゃない」という厳しい声がある一方で、多くの投手がそれなりに死球を出す中で、藤浪晋太郎選手だけが過度に叩かれているという見方も存在します。
藤浪投手のデッドボールが野球界に与えた影響
藤浪晋太郎投手のデッドボール問題は、彼個人の成績や評価だけでなく、野球界全体にも少なからず影響を与えました。彼の登板時には、相手打者が内角球に対してより一層警戒するようになり、試合展開にも影響が出ることがありました。
また、危険な投球に対する議論は、投手の制球力や安全性の重要性を改めて認識させるきっかけにもなりました。
特に、頭部への死球は選手のキャリアを脅かす可能性もあるため、藤浪晋太郎選手の事例は、野球におけるリスク管理や選手保護の観点からも注目されました。
彼のケースは、若手投手がプロの舞台で成長していく上での課題や、精神的な側面を含む総合的なサポートの必要性を浮き彫りにしたと言えるでしょう。
藤浪晋太郎はデッドボールの「ギネス記録」を持っているのか?
藤浪晋太郎投手のデッドボールの多さから、「ギネス記録を持っているのではないか」という憶測が流れることがあります。しかし、実際のところはどうなのでしょうか。
デッドボールに関するギネス記録の公式見解
結論から言うと、藤浪晋太郎投手がデッドボールに関するギネス世界記録を保持しているという公式な発表はありません。
ギネス世界記録には多岐にわたる記録が存在しますが、プロ野球における特定の投手の死球数に関する公式な記録として、藤浪晋太郎投手の名前が登録されているという事実は確認されていません。
ギネス記録は、一般的に世界的に認められた基準や検証可能な明確な記録に対して認定されます。
藤浪投手のデッドボール数と歴代死球数の比較
藤浪晋太郎投手のNPB通算死球数は55個(2022年シーズン終了時点)です。
この数字は決して少ないものではありませんが、日本のプロ野球の歴代投手の中には、さらに多くの死球を与えている投手も存在します。
例えば、阪神タイガースのOBである西勇輝選手は通算87個の死球を記録しています。
プロ野球の長い歴史の中には、投球スタイルや時代背景によって、多くの死球を記録した投手がいます。
藤浪晋太郎投手の死球が目立つのは、彼の高い球速と荒々しい投球スタイルが組み合わさることで、危険性が強調されやすいという側面があるためかもしれません。
しかし、客観的なデータで見ると、彼が「ギネス記録」を保持しているわけではなく、歴代で見ても彼よりも多くの死球を与えている投手は存在します。
藤浪晋太郎のデッドボール問題は今後どうなる?改善への展望
藤浪晋太郎投手のデッドボール問題は、彼が新たなチームで活躍を続ける上で避けては通れない課題です。
しかし、これまでの経験と取り組みから、改善への展望も見えてきます。
制球力向上のための取り組みと課題
藤浪晋太郎投手は、制球力向上のために様々な取り組みを行ってきました。
特に2017年のシーズンオフからは、本格的な動作解析を取り入れ、体の使い方のズレを修正し、安定した投球フォームを確立しようと努力しています。
また、ダルビッシュ有選手やクレイトン・カーショウ選手といったメジャーリーグのトップ投手との合同自主トレを通じて、新たな技術やトレーニング方法を取り入れるなど、探求心を持ち続けています。
メジャーリーグ移籍後も、先発から中継ぎへと役割を転向することで、短イニングでの集中力を高め、制球の安定化を図りました。
実際に、オリオールズ移籍後は11試合連続無四球を記録するなど、一定の成果を上げています。
しかし、依然として課題は残されており、彼の持ち味である豪快なフォームと高出力を維持しつつ、いかに精密なコントロールを両立させるかが、今後の大きなテーマとなるでしょう。
メンタル面へのサポート体制
藤浪晋太郎投手のデッドボール問題は、技術的な側面だけでなく、メンタル面も深く関わっているとされています。
彼自身、過去のデッドボールが原因で、投球への恐怖心やプレッシャーを感じることがあったかもしれません。
今後の活躍のためには、技術指導だけでなく、精神的なサポートも不可欠です。プロの現場では、スポーツ心理学者やメンタルトレーナーによるサポートが一般的になってきています。
藤浪晋太郎投手も、そうした専門家の助言を得ながら、精神的な安定を保ち、最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えることが重要です。
過去の経験を乗り越え、自信を持ってマウンドに立てるようになることが、制球力向上にも繋がります。
今後の活躍にデッドボール問題が与える影響
藤浪晋太郎投手は、2025年7月16日に横浜DeNAベイスターズへの移籍が発表されました。
背番号は「27」。新たな環境での再出発は、彼のキャリアにおける大きな転機となるでしょう。
デッドボール問題は、藤浪晋太郎投手にとって常に付きまとう影のような存在でしたが、同時に彼の投球における「荒々しさ」や「迫力」といった魅力の一部でもありました。
制球力が安定し、デッドボールが減少すれば、打者に対する脅威は変わらず、さらに効果的な投球ができるようになるでしょう。
メジャーリーグでの経験、そして日本球界への復帰という新たな挑戦を通じて、彼がデッドボール問題とどう向き合い、どのように克服していくかは、今後の彼の野球人生を左右する重要な要素です。
もし、彼がこの課題を完全に克服し、安定したピッチングを披露できるようになれば、日本プロ野球界、ひいては野球界全体にとって、彼のキャリアは大きな成功事例となるはずです。
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