秋風が吹き始め、プロ野球ペナントレースが佳境を迎えると、野球ファンの心は次なる戦い「クライナックスシリーズ(CS)」へと向かいます。
レギュラーシーズンを勝ち抜いた猛者たちが、たった一つの日本シリーズ出場権をかけて激突する短期決戦。
その独特の緊張感と予測不能なドラマは、多くの人々を魅了してやみません。
しかし、このクライマックスシリーズには、レギュラーシーズンとは少し異なる、独自のルールが存在します。
特に勝敗の行方を大きく左右するのが「引き分け」の扱いです。
ファンの方々の中にも、

引き分けたら試合は一体どうなるの?
延長戦は何回まで続くのだろうか?
なぜ上位チームがこんなに有利なの?
と感じる方も少なくないでしょう。
実は、この複雑に見えるルールこそが、クライマックスシリーズの醍醐味であり、戦略の鍵を握る重要な要素なのです。
その仕組みを深く理解することで、一つ一つのプレーに込められた意味が分かり、テレビ観戦や現地での応援が何倍も面白くなるはずです。
この記事では、そんなクライマックスシリーズの引き分けに関するルールを、基本のキから各ステージごとの具体的な影響、そしてなぜこのような制度になっているのかという背景まで、どこよりも分かりやすく、そして詳しく徹底的に解説していきます。
この記事を最後まで読むことで、以下の点について深く理解できます。
- クライマックスシリーズにおける引き分けの基本定義とルール
- 引き分けが各ステージの勝敗に与える具体的な影響とシミュレーション
- 上位チームが絶対的に有利とされる理由とアドバンテージの仕組み
- 悪天候などで試合が消化できなかった場合の特殊な勝者決定方法


クライマックス シリーズの引き分けに関する基本ルール


まずは、クライマックスシリーズ全体に共通する引き分けの基本的なルールから見ていきましょう。
ここを理解することが、シリーズ全体の流れを掴むための第一歩となります。
- 延長戦は何回まで?引き分けの定義
- 引き分けの場合、再試合は行われる?
- 引き分け試合で勝敗はどうなる?
- 引き分けは上位チームが有利になる?
- 特殊な引き分けコールドゲームとは
延長戦は何回まで?引き分けの定義


クライマックスシリーズの試合で、9回裏の攻撃が終了しても両チームの得点が同じだった場合、試合は延長戦へと突入します。
この点はレギュラーシーズンと何ら変わりありません。
延長戦は最大で12回まで行われます。
そして、延長12回の攻防を終えてもなお決着がつかず同点だった場合、その試合は「引き分け」として成立し、終了となります。
なぜ12回までなのかというと、選手のコンディションへの配慮や、試合時間が長くなりすぎることによる運営上の問題などを総合的に考慮した結果、レギュラーシーズンと同様の規定が採用されています。
短期決戦とはいえ、選手の健康を守り、公平な試合環境を維持するための重要なルールです。
こうした手に汗握る延長戦の攻防は、野球の最もエキサイティングな瞬間の一つです。
球場の熱気を自宅で、あるいは移動中にでも余すところなく体感したいと考えるのは、ファンとして当然のことでしょう。
現代では、多様な観戦スタイルに対応したサービスが充実しています。
野球以外のエンターテインメントも幅広く楽しみたいなら
ABEMAでは、注目の試合を生中継。プレミアムプランに加入すれば、広告なしで快適に視聴できるだけでなく、オリジナル番組や人気のアニメ、ドラマ、映画なども見放題。
野球観戦以外の時間も充実させたい方におすすめです。
引き分けの場合、再試合は行われる?


結論から言うと、クライマックスシリーズでは試合が引き分けに終わったとしても、再試合は一切行われません。
これは、シリーズの日程が非常にタイトに組まれていることが最大の理由です。
ファーストステージは最大3試合、ファイナルステージは最大6試合と、次のステージや日本シリーズ開幕までの限られた期間内に勝者を決定しなければなりません。
もし再試合を認めてしまうと、日程が際限なく延びてしまい、シリーズ全体の運営に支障をきたす恐れがあります。
そのため、「引き分け」は再試合の対象ではなく、あくまで一つの確定した試合結果として扱われます。
そして、この「再試合なし」というルールが、後述する上位チーム優位の原則と密接に結びつき、引き分けの価値を非常に特殊なものにしているのです。
引き分け試合で勝敗はどうなる?
ここがクライマックスシリーズのルールを理解する上で、最も重要で核心的な部分です。シリーズの勝者を決めるのは、単純な勝ち数だけではありません。
シリーズの勝者は、引き分けの試合を除いた「勝利数」によって決まります。
そして、もし両チームの勝利数が同じになった場合は、レギュラーシーズンの順位が上位のチームが勝者となります。
例えば、ファーストステージ(2位 vs 3位)が1勝1敗1分けという結果で終わったとします。
この場合、両チームの勝利数は「1」で並びます。ここで上記のルールが適用され、レギュラーシーズン2位のチームが勝者としてファイナルステージに進出するのです。
3位のチームは、たとえ直接対決で負け越していなくても、勝利数で上回れなかった時点で敗退が決定します。
引き分けは上位チームが有利になる?
前述のルールから導き出される答えは、明確に「YES」です。
クライマックスシリーズは、143試合という長いペナントレースを戦い抜き、上位の成績を収めたチームに対する敬意と優位性を確保するために、意図的にそのように設計されています。
この制度の根幹にあるのは、「下位チームは、上位チームを勝利数で上回らなければ勝ち上がれない」という絶対的な原則です。
上位チームの視点
勝利数で「並びさえすれば良い」。
つまり、負けさえしなければ、引き分けでも勝ち上がりの可能性を維持、あるいは決定させることができます。
引き分けは「価値ある引き分け」となり、守備的な戦術も選択肢に入ります。
下位チームの視点
勝利数で「上回らなければならない」。
つまり、引き分けは実質的に「負け」に近い意味合いを持ちます。
常に勝ちに行く積極的な姿勢が求められ、戦術的な制約も大きくなります。
このように、引き分けという結果がもたらす意味合いが、上位チームと下位チームとで全く異なるのです。
これが「下剋上」を難しくさせ、シリーズをより戦略的なものにしています。
特殊な引き分けコールドゲームとは
クライマックスシリーズには、試合の決着が実質的についたと判断される場合に適用される、少し特殊なコールドゲーム規定が存在します。
これは、後攻チーム(ホームチーム=上位チーム)がシリーズの勝ち上がりに王手をかけている試合の最終回(12回)で発生する可能性があります。
このルールを理解するために、具体的なシナリオを考えてみましょう。
ケース1:12回表の攻撃終了時点で同点の場合
後攻チームが、この試合に引き分け以上でシリーズ突破が決まる状況で、12回表を守っているとします。
そして、相手チームの攻撃を0点に抑え、同点のまま12回表が終了しました。
この瞬間、後攻チームの12回裏の攻撃は行われずに、試合終了となります。
なぜなら、後攻チームはこれ以上点を取られて負ける可能性が消滅し、引き分け以上が確定したため、その時点でシリーズの勝者となるからです。
ケース2:12回裏の攻撃中に同点に追いついた場合
後攻チームが1点ビハインドで12回裏の攻撃を迎えたとします。
この回に1点を取って同点に追いついた瞬間、試合はその場で終了となります。
通常であればサヨナラ勝ちを目指して攻撃を続けるところですが、このルールでは同点になった時点で後攻チームのシリーズ突破が確定するため、それ以上の攻撃は不要と判断されるのです。
これらのルールは、既に勝敗が決しているにも関わらず無用なプレーを続けることを避け、試合を合理的に終わらせるために設けられています。
クライマックス シリーズの引き分けが勝敗に与える影響


基本ルールを理解したところで、次に各ステージで引き分けが具体的にどのように作用するのかを、より詳しく見ていきましょう。
- ファーストステージでの引き分けの扱い
- 1勝1敗1分ならどちらが勝者?
- ファイナルステージでの引き分けの扱い
- アドバンテージと引き分けの関係性
- 悪天候で試合中止になった場合
ファーストステージでの引き分けの扱い
レギュラーシーズン2位と3位が対戦するファーストステージは、3試合制で行われ、先に2勝したチームが勝者です。
しかし、ここには「引き分け」と「上位優位」のルールが絡み合い、単純な2勝先取とは言えない状況が生まれます。
両チームの勝ち上がり条件を整理してみましょう。
【2位チームの勝ち上がり条件】
- 2勝する(例:○○、○●○)
- 1勝0敗2分
- 1勝1敗1分
- 0勝0敗3分
要するに、2位チームは「負け越しさえしなければ良い」のです。
1勝でも挙げれば、残りの2試合を引き分けるだけで勝ち上がりが決まります。
【3位チームの勝ち上がり条件】
- 2勝0敗(○○)
- 2勝1敗(○●○、●○○)
- 2勝0敗1分
3位チームは、何があっても「2勝すること」が絶対条件です。
1勝1敗1分では敗退となるため、引き分けは許されません。
この条件の差が、試合展開や監督の采配に大きな影響を与えます。
2位チームは継投策で確実に引き分けを狙う戦術も取れますが、3位チームは常に得点を奪いに行く積極策が求められます。
ファーストステージ 勝者決定パターン表
2位チームの結果 | 3位チームの結果 | シリーズ勝者 | 備考 |
2勝 0敗 | 0勝 2敗 | 2位チーム | 第2戦で決着 |
1勝 0敗 1分 | 0勝 1敗 1分 | 2位チーム | 第2戦で決着 |
1勝 1敗 1分 | 1勝 1敗 1分 | 2位チーム | 勝利数が同数のため |
1勝 0敗 2分 | 0勝 1敗 2分 | 2位チーム | 勝利数が上回るため |
0勝 0敗 3分 | 0勝 0敗 3分 | 2位チーム | 勝利数が同数のため |
0勝 2勝 | 2勝 0敗 | 3位チーム | 第2戦で決着 |
1勝 2勝 | 2勝 1敗 | 3位チーム | 第3戦で決着 |
1勝1敗1分ならどちらが勝者?
このシナリオは、ファーストステージのルールの象徴とも言えるケースです。
初戦を3位チームが、第2戦を2位チームが取り、1勝1敗で迎えた運命の第3戦。
両チーム一歩も譲らぬ投手戦となり、延長12回を戦い抜いたもののスコアボードには0が並び、引き分けに終わった…
この劇的な結末の瞬間、歓喜に沸くのはレギュラーシーズン2位のチームです。
最終成績は1勝1敗1分。両チームの勝利数は「1」で並びました。
この場合、クライマックスシリーズの大原則である「勝利数が同じ場合は、レギュラーシーズン上位チームを勝者とする」が適用されます。
紙一重の戦いを繰り広げながらも、3位チームは「勝利数で上回る」という絶対条件をクリアできず、ここで敗退となります。
143試合の積み重ねが、この最後の最後で明暗を分けるのです。
ファイナルステージでの引き分けの扱い


過酷なファーストステージを勝ち上がったチームを待ち受けるのが、レギュラーシーズン1位のチームが君臨するファイナルステージです。
ここでのルールは、さらに1位チームが有利になるよう設定されています。
このステージは6試合制ですが、最大の特徴は1位チームに与えられる「1勝のアドバンテージ」です。
これは、シリーズが始まる前から1位チームに1勝が与えられていることを意味します。
そのため、勝敗のカウントは「1勝0敗」からスタートするのです。
日本シリーズへの出場権は、このアドバンテージを含めて先に4勝したチームが得ます。
- 1位チームの勝利条件: アドバンテージの1勝 + 実際の試合で3勝 = 計4勝
- 挑戦者の勝利条件: 実際の試合で4勝 = 計4勝
引き分けの扱いはファーストステージと同じで、勝利数が並んだ場合は1位チームが勝者となります。
このアドバンテージの存在により、挑戦者チームは極めて困難な戦いを強いられることになります。
アドバンテージと引き分けの関係性
ファイナルステージにおける「1勝のアドバンテージ」と「引き分け」の組み合わせは、挑戦者チームにとって非常に高い壁となります。
考えてみてください。挑戦者チームは6試合で4回も勝たなければなりません。
勝率にすると.667以上という、非常に高いハードルです。
一方で、1位チームは6試合で3勝すれば良い、つまり勝率.500で勝ち上がることができます。
ここに引き分けが絡むと、挑戦者はさらに苦しくなります。
なぜなら、引き分けは試合数を1つ消化してしまうからです。挑戦者チームにとって、勝つチャンスが1試合減るのと同じ意味を持ちます。
例えば、シリーズが2勝2敗2分で終わったとします。
この場合、勝利数は2で並びますが、1位チームにはアドバンテージの1勝があるため、最終的な勝敗は「3勝2敗2分」となり、1位チームの圧勝です。
挑戦者チームは、引き分けを挟みながら4つの勝利を積み上げるという、極めて困難な戦いになるのです。
これほどまでにドラマチックな戦いは、やはり球場で直接その熱気を感じたいものです。
しかし、ポストシーズンのチケットは入手困難を極めます。
公式リセールサイトのticketcircle チケットサークルをチェックしてみましょう。
急遽行けなくなったファンが出品したチケットを、定価で安全に購入できるチャンスがあります。
こまめにサイトを確認することが、奇跡の一枚に繋がるかもしれません。


悪天候で試合中止になった場合
クライマックスシリーズには予備日が設定されていますが、秋の長雨や台風など、天候不順によって全試合を消化できないという不測の事態も想定されています。
もし、予備日をすべて使用してもなお所定の試合数を消化できなかった場合、その時点での成績によって勝者が決定されます。
ここでも適用されるのは、これまで何度も登場したあの大原則です。
これは、極端な話、ファイナルステージが1試合も行われずに全試合中止となった場合でも、アドバンテージを持つ1位チームが日本シリーズに進出することを意味します。
選手のコンディション維持や球場運営の観点からダブルヘッダー(1日に2試合行うこと)は実施されないため、日程通りに試合を消化できるかどうかも、シリーズの行方を左右する隠れた要因と言えるでしょう。
このルールについては、NPB公式サイトでも詳細が定められています。
クライマックス シリーズ引き分けルールの重要点


最後に、この記事で解説してきたクライマックスシリーズにおける引き分けルールの複雑かつ重要なポイントを、箇条書きで総まとめします。
- クライマックスシリーズではレギュラーシーズン同様に引き分けが存在する
- 延長戦は12回まで行われ、同点のまま終了すると引き分けとなる
- 引き分けに終わった試合の再試合は、いかなる場合も行われない
- シリーズの勝者は、引き分けの試合を除外した「勝利数」で決定される
- もし両チームの勝利数が同じになった場合、ペナントレース上位チームが勝者となる
- この大原則により、シリーズは上位チームが絶対的に有利な仕組みとなっている
- ファーストステージは2位と3位が3試合制で対戦する
- 2位チームは1勝でもするか、一度も負け越さなければステージを突破できる
- 3位チームが勝ち上がるには、必ず2勝することが絶対条件となる
- ファイナルステージは1位チームとファーストステージ勝者が6試合制で対戦
- ファイナルステージでは1位チームに「1勝のアドバンテージ」が与えられる
- アドバンテージを含めて、先に4勝したチームが日本シリーズへと進出する
- つまり1位チームは実際の試合で3勝すれば良い(勝率5割でOK)
- 一方で挑戦者チームは4勝が必要となり(勝率.667以上)、極めて厳しい
- 悪天候などで全試合を消化できない場合も、その時点の勝利数と順位で勝者が決まる
- 引き分けの存在は、単なる試合結果以上に、シリーズ全体の戦略と勝敗の行方を大きく左右する
クライマックスシリーズの関連記事はこちら