プロ野球中継を見ていると、「今日の勝利で貯金が5になりました」「なんとか借金を返済したいですね」といった解説を耳にすることがあります。
この「貯金」や「借金」が、チームの勝ち越しや負け越しの数を指すことは知っていても、その詳しい計算方法や、引き分けがどう影響するのか、またゲーム差との関係性まで正確に理解している方は少ないかもしれません。
この記事では、野球観戦がもっと面白くなる「貯金」と「借金」の基本を徹底的に解説します。
さらに、歴代の最多記録や驚くべき借金ランキング、そしてなぜ全球団が借金生活に陥るという珍事が起きたのか、その理由にも迫ります。
現在のルールでは借金を抱えたチームの優勝もあり得るのか、気になる情報まで網羅しています。
この記事を読むことで、以下の点について理解が深まります。
- 貯金と借金の基本的な意味と簡単な計算方法
- 貯金が順位やゲーム差にどのように影響するのか
- プロ野球史に残る貯金と借金の最多記録や珍しい事例
- クライマックスシリーズ制度における借金チームと優勝の関係性

基本から解説!野球 貯金とは何か

- 貯金の意味と簡単な計算方法
- 引き分けは貯金の計算に含む?
- 貯金と密接に関わるゲーム差
- 勝ち越し・負け越しの重要性
- シーズン中の順位変動の指標
貯金の意味と簡単な計算方法
野球における「貯金」とは、チームの勝ち越し数を表すシンプルな指標です。
逆に「借金」は負け越し数を指します。
これらの用語は、チームの現在の勢いやシーズンを通した安定性を直感的に把握するために用いられます。
計算方法は非常に簡単で、単純にシーズンの総勝利数から総敗戦数を引くだけです。
貯金・借金の数 = 勝利数 – 敗戦数
この計算結果がプラスであれば「貯金」、マイナスであれば「借金」となります。
例えば、あるチームの成績が30勝20敗5分の場合、計算式は「30勝 – 20敗」となり、「貯金10」と表現されます。
もし成績が25勝35敗2分であれば、「25勝 – 35敗」で「借金10」となります。
このように、貯金や借金を見ることで、チームが勝ち越しているのか、それとも負け越しているのかが一目で分かります。

実際の順位表での確認
具体的な例として、2020年のパシフィック・リーグの最終順位表を見てみましょう。
各チームの貯金または借金が、チームの強さを分かりやすく示していることが見て取れます。
順位 | チーム | 勝ち | 負け | 分け | 貯金/借金 |
1 | ソフトバンク | 73 | 42 | 5 | 貯金31 |
2 | ロッテ | 60 | 57 | 3 | 貯金3 |
3 | 西武 | 58 | 58 | 4 | 貯金0 |
4 | 楽天 | 55 | 57 | 8 | 借金2 |
5 | 日本ハム | 53 | 62 | 5 | 借金9 |
6 | オリックス | 45 | 68 | 7 | 借金23 |
この表からも分かる通り、貯金が多いチームほど上位に位置し、借金が多いチームは下位に沈む傾向があります。
引き分けは貯金の計算に含む?
結論から言うと、引き分けの数は貯金や借金の計算には直接含まれません。
前述の通り、計算式はあくまで「勝利数 – 敗戦数」であり、引き分けの数はこの計算から除外されます。
ただし、引き分けが全く無関係というわけではありません。プロ野球の順位は、最終的に「勝率」によって決定されます。勝率の計算式は以下の通りです。
勝率 = 勝利数 ÷ (勝利数 + 敗戦数)
引き分けの試合は、この勝率計算の分母(総試合数)に含まれないため、勝敗がついた試合の結果に比べて順位への影響が間接的になります。
しかし、特にシーズン終盤の僅差の争いでは、引き分け一つが最終順位を左右するケースも少なくありません。
例えば、敗色濃厚な試合を引き分けに持ち込むことができれば、敗戦を一つ免れることになり、結果的に貯金が減るのを防ぐ効果があります。
そのため、引き分けは貯金の数には直接影響しませんが、チームの勝率を維持し、順位を争う上で無視できない要素と言えます。
貯金と密接に関わるゲーム差
「ゲーム差」とは、順位表で上位チームと下位チームがどれだけ離れているかを示す指標であり、この計算には各チームの貯金数が大きく関わっています。
ゲーム差の基本的な計算方法は、2チーム間の貯金数の差を2で割ることで求められます。
ゲーム差 = (上位チームの貯金数 – 下位チームの貯金数) ÷ 2
具体例を挙げてみましょう。
首位のAチームが「貯金10」、2位のBチームが「貯金4」だったとします。この場合、ゲーム差は「(10 – 4) ÷ 2 = 3」となり、「3.0ゲーム差」と表記されます。
なぜ2で割るのかというと、下位チームが上位チームに追いつくためには、自身が1勝し、かつ上位チームが1敗する必要があるからです。
この「直接対決で1勝」すると、下位チームの貯金が1増え、上位チームの貯金が1減るため、貯金の差が一気に2つ縮まります。
この2つの貯金の動きを「1ゲーム」と捉えるため、貯金差を2で割る計算式が用いられているのです。
このように、貯金の数はチーム単体の強さを示すだけでなく、他チームとの差を測るゲーム差の基準にもなっており、ペナントレースの状況を把握する上で欠かせない数字です。
勝ち越し・負け越しの重要性
シーズンを通して勝ち越しの状態、つまり「貯金」を維持することは、チーム運営において非常に大切です。
貯金があるということは、チームが安定して勝利を積み重ねている証拠であり、精神的な余裕にも繋がります。
貯金がもたらす好循環
貯金が多いチームは、多少の連敗があっても順位が大きく下がりにくく、選手起用や戦略にも幅が生まれます。
例えば、若手選手を試す余裕ができたり、主力選手に休養を与えたりと、長期的な視点でシーズンを戦うことが可能になります。
これがさらなる勝利を生む好循環に繋がることも少なくありません。
借金がもたらす悪循環
一方で、「借金」を抱えている状態は、チームが苦戦していることを示します。
借金が増えるほど、1つの敗戦が重くのしかかり、チーム内に焦りが生まれることがあります。
連敗が続くと借金はあっという間に膨らみ、Aクラス(3位以内)入りや優勝争いから脱落する大きな要因となり得ます。
ファンにとっても、応援するチームの借金が増えていく状況は心配の種となります。
したがって、各チームはシーズン序盤から着実に貯金を積み重ね、5割ライン(勝ちと負けが同数)を一つの目安としながら、安定した戦いを目指します。
シーズン中の順位変動の指標
貯金の増減は、シーズン中のチームの勢いを示すバロメーターとして機能し、順位変動を予測するための重要な指標となります。
例えば、大型連勝を記録したチームは、短期間で貯金を大きく増やし、一気に順位を上げることがあります。
2025年現在、熱戦が繰り広げられるプロ野球のペナントレースでは、このような貯金のダイナミックな動きがファンを魅了する要素の一つです。
逆に、それまで貯金を多く持っていたチームが大型連敗を喫し、あっという間に貯金を使い果たして順位を落とすこともあります。
特に、複数のチームが僅差で競い合う混戦状態では、日々の勝敗による貯金の増減が直接順位に反映されるため、ファンは毎日順位表を確認しながら一喜一憂することになります。
貯金の推移を追いかけることは、単に試合の勝敗を見るだけでなく、シーズン全体の大きな流れを理解し、応援するチームの現在地を把握する上で非常に有効な方法です。
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- プロ野球の貯金最多記録は?
- 歴代のワースト借金ランキング
- なぜ全球団が借金になったのか
- 借金があっても優勝できるのか
- クライマックスシリーズと借金の関係
- まとめ:野球 貯金とは強さの証
プロ野球の貯金最多記録は?
プロ野球の70年以上にわたる歴史の中で、シーズン最多貯金記録として燦然と輝くのは、1950年に松竹ロビンス(現在の横浜DeNAベイスターズの前身球団の一つ)が達成した「貯金63」です。
この年の松竹ロビンスは、まさに圧倒的な強さを誇りました。シーズン成績は98勝35敗4分、勝率は.737という驚異的な数字を残しています。
この強さの原動力となったのが、「水爆打線」と恐れられた強力な攻撃陣でした。
特に、本塁打王と打点王の二冠に輝いた小鶴誠選手を筆頭に、投打がかみ合ったチーム力でセ・リーグを席巻しました。
興味深いのは、これだけの独走状態でありながら、2位の中日ドラゴンズも「貯金45」という非常に高い数字を記録していた点です。
このため、最終的なゲーム差は9.0と、貯金額の差から想像するよりも離れていませんでした。
このことからも、1950年のセ・リーグがいかにハイレベルなシーズンだったかがうかがえます。
現代のプロ野球では、ここまで突出した貯金が生まれることは極めて稀であり、この記録は今後も破られることのない大記録として語り継がれていくと考えられます。
歴代のワースト借金ランキング
輝かしい記録がある一方で、プロ野球の歴史には厳しいシーズンの記憶も刻まれています。
シーズン最多借金記録は、奇しくも同じ「借金68」という数字で、2つのチームによって記録されています。
最多借金記録を持つチーム
- 1955年 大洋ホエールズ
(現:横浜DeNAベイスターズ)- シーズン成績:31勝99敗、勝率.238
- 1958年 近鉄パールス(後の近鉄バファローズ)
- シーズン成績:29勝97敗4分、勝率.238
両チームとも、もちろんリーグ最下位に終わり、シーズンを通して100敗に近い敗戦を喫しました。
勝率は2割台前半という低水準で、上位チームとの間には埋めがたい戦力差が存在した時代でした。
現代のプロ野球では、ドラフト制度の整備やFA制度などにより、チーム間の戦力は以前よりも均等化される傾向にあります。
そのため、ここまで極端な借金を抱えるチームが出ることは考えにくくなっており、この記録もまた、球史に残る一つの側面を物語る数字と言えるでしょう。
なぜ全球団が借金になったのか
通常、リーグ全体で見れば、あるチームが貯金を作れば、別のどこかのチームが借金を背負うため、貯金の合計と借金の合計はゼロになるはずです。
しかし、2015年のセ・リーグでは、シーズン途中で「全球団が借金を抱える」という極めて珍しい現象が発生しました。
2015年7月3日時点のセ・リーグ順位表では、首位のヤクルトと2位の阪神が「借金1」で並び、以下すべてのチームが借金を抱えるという異常事態に陥りました。
この珍事が起きた主な理由は2つ挙げられます。
理由1:交流戦での大きな負け越し
一つ目の理由は、その年のセ・パ交流戦で、セ・リーグの球団がパ・リーグの球団に対して大きく負け越してしまったことです。
2015年の交流戦の対戦成績は、セ・リーグの44勝に対し、パ・リーグが61勝(3引き分け)と圧勝しました。
これにより、セ・リーグ全体がパ・リーグに対して「借金17」を作ってしまった形となり、リーグ内の貯金がパ・リーグに吸い取られてしまいました。
理由2:セ・リーグ内の混戦
二つ目の理由は、交流戦終了後のセ・リーグ内での戦いが、まれに見る大混戦となったことです。
交流戦によって減ってしまったリーグ全体の貯金を、セ・リーグの6球団が互いに奪い合う展開となりました。
特定のチームが突出して勝ち越すことができず、各チームが僅差でひしめき合った結果、ついに全てのチームから貯金が消えてしまったのです。
この状況は当時、「セ界の終わり」などと揶揄されましたが、最終的にはヤクルトが貯金を作ってリーグ優勝を果たしました。
これは、交流戦がリーグ全体の成績に大きな影響を与えることを示す象徴的な出来事でした。
借金があっても優勝できるのか
結論を先に言うと、現在のプロ野球のルールでは、レギュラーシーズンを借金で終えたチームが日本一に輝く可能性は理論上存在します。
その鍵を握るのが「クライマックスシリーズ(CS)」の存在です。
レギュラーシーズン終了後、セ・パ両リーグの上位3チーム(Aクラス)が、日本シリーズへの出場権をかけてトーナメント形式で戦います。
つまり、シーズンを負け越し、つまり借金を抱えた状態で終えたとしても、順位が3位以内であればCSに出場する権利を得られるのです。
そして、CSのファーストステージ、ファイナルステージを勝ち抜き、リーグ代表となれば日本シリーズに進出できます。
そこで勝利すれば、借金チームが「日本一」となるわけです。
これまでに借金を抱えたチームが日本シリーズまで進出した例はまだありませんが、CSに出場したケースは決して珍しくありません。
過去に借金でCSに出場した主なチーム
年 | チーム | 順位 | 成績 | 貯金/借金 |
2009年 | ヤクルト | 3位 | 71勝72敗1分 | 借金1 |
2013年 | 広島 | 3位 | 69勝72敗3分 | 借金3 |
2016年 | DeNA | 3位 | 69勝71敗3分 | 借金2 |
2018年 | 巨人 | 3位 | 67勝71敗5分 | 借金4 |
2021年 | 巨人 | 3位 | 61勝62敗20分 | 借金1 |
このように、借金を抱えながらもAクラスを確保し、短期決戦に臨むチームは頻繁に現れています。
このルールがある限り、「借金持ちの日本一チーム」が誕生する可能性は常に存在すると言えます。
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チケットサークルで観戦チケットを探すクライマックスシリーズと借金の関係
クライマックスシリーズ(CS)という制度は、レギュラーシーズンの価値と借金の意味合いに、少なからず影響を与えています。
この制度にはメリットとデメリットの両面があり、ファンの間でも賛否両論が交わされるテーマの一つです。
メリット:消化試合の減少
CSが導入された最大のメリットは、シーズン終盤のいわゆる「消化試合」が大幅に減ったことです。
以前は優勝チームと最下位が早々に決まってしまうと、残りの試合は観客の興味を失いがちでした。
しかし、現在は3位以内に入れば日本一の可能性があるため、シーズン最終盤までAクラス争いが熾烈になり、多くの試合が緊張感を持続します。
これにより、興行的な成功に繋がっている側面は否定できません。
デメリット:シーズンの価値への疑問
一方で、デメリットとして指摘されるのが、143試合を戦うレギュラーシーズンの重みが相対的に軽くなるという点です。
前述の通り、首位チームに大きくゲーム差をつけられた借金持ちの3位チームが、短期決戦を勝ち抜いて日本一になる可能性があるため、「リーグ優勝とは何だったのか」という議論が起こります。
このため、CSではリーグ優勝チームに1勝のアドバンテージが与えられるなどのルール改定が行われてきましたが、制度そのものに対する根本的な議論は今も続いています。
CSの存在は、借金を抱えたチームにも最後まで希望を残す一方で、ペナントレースの価値についてファンに問いかけ続ける制度と言えるでしょう。
まとめ:野球 貯金とは強さの証

この記事では、プロ野球における「貯金」と「借金」について、基本的な意味から歴史的な記録、そして現代のルールとの関係性まで幅広く解説してきました。
最後に、本記事の重要なポイントをまとめます。
- 野球における貯金は勝ち越し数を意味する
- 借金は負け越し数を表す
- 計算方法は単純に「勝利数 – 敗戦数」
- 引き分けの数は貯金の直接的な計算には含まれない
- 勝率によって順位が決まるため引き分けも間接的に重要
- ゲーム差はチーム間の貯金数をもとに計算される
- 貯金はチームの安定性と強さを示す指標
- 借金はチームの苦戦状況を表す
- シーズン最多貯金記録は1950年松竹ロビンスの「63」
- シーズン最多借金記録は1955年大洋と1958年近鉄の「68」
- 2015年のセ・リーグでは全球団が借金を抱える珍事があった
- 原因は交流戦での大きな負け越しとリーグ内の混戦
- 現行ルールでは借金チームが日本一になる可能性がある
- 3位以内に入ればクライマックスシリーズに出場できるため
- 過去に借金でCSに進出したチームは複数存在する
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