野球の試合観戦やプレー中に、「ボーク」という言葉を耳にしたことはありませんか。
ルールが複雑で、どのような条件で宣告されるのか、ピッチャーはセットポジションで何秒静止すれば良いのか、わかりやすく知りたいと感じている方も多いはずです。
特に、ランナーをアウトにしようとする牽制の場面では、些細な動きがボークと判定されることも少なくありません。
ボークになると、ランナーは進塁してしまい、チームにとって大きな痛手となります。
この記事では、野球のボークとは何かという基本から、宣告される具体的な場面、そして試合に与える影響まで、初心者の方にも理解できるよう丁寧に解説します。
- ボークが宣告される具体的な条件
- セットポジションで静止すべき秒数の目安
- 牽制など場面別の注意点
- ボークが試合に与える影響
野球のボークとは?基本ルールを解説

- まずはボークの定義をわかりやすく
- ボークが宣告される基本的な条件
- セットポジションでは何秒静止すべきか
- ワインドアップとセットポジションの違い
- 投球動作でボークになる主なパターン
- ピッチャープレートに関する反則行為
まずはボークの定義をわかりやすく
野球におけるボークとは、ピッチャーによる反則行為の一つです。
主に塁上にランナーがいる状況で、ピッチャーがバッターやランナーを騙すような不正な動きをした場合に宣告されます。
このルールの目的は、ピッチャーが不当な手段でランナーを不利な状況に陥れるのを防ぎ、フェアプレーを確保することにあります。
例えば、投げるふりをしてランナーを誘い出してアウトにするような、紛らわしい行為を取り締まるために設けられています。
ボークが宣告されると、ランナーに進塁権が与えられるため、ピッチャーは常に正しい動作を意識しなくてはなりません。
ボークが宣告される基本的な条件
ボークが宣告されるための最も基本的な条件は、「塁上に一人でもランナーがいること」です。
ランナーが一人もいない状況では、これから解説するようなボークに該当する行為をピッチャーが行ったとしても、基本的にはボークは宣告されません。
これは、ボークがランナーを不当に不利にさせないためのルールであるからです。
そのため、ランナーがいなければ、保護すべき対象が存在しないと考えられます。
ただし、反則投球など一部の行為については、ランナーがいなくてもボールカウントが一つ追加されるなどのペナルティが科される場合があります。
公認野球規則では13の項目が定められており、ピッチャーはこれらのルールを正確に理解する必要があります。
(参照:日本野球機構(NPB)オフィシャルサイト 公認野球規則 )
セットポジションでは何秒静止すべきか
ランナーがいる場面で多用されるセットポジションですが、「完全に静止してから投球しなければならない」というルールがあります。
この「静止時間」について、具体的に「何秒」という明確な規定は野球規則にはありません。
重要なのは、審判が「ピッチャーが完全に静止した」と判断できるかどうかです。
一般的には、1秒から2秒程度、グラブとボールを保持した両手を身体の前で静止させることが目安とされています。
静止が短すぎると、クイックモーションと見なされてボークを取られる可能性が高まります。
逆に長すぎても、不自然な間と判断される場合もあるため、自然な流れの中で一瞬動きを止める意識が大切になります。
最終的な判断は審判に委ねられているため、ピッチャーは審判に誤解を与えない、はっきりとした静止を心がけることが求められます。
ワインドアップとセットポジションの違い
ピッチャーの投球フォームには、大きく分けて「ワインドアップポジション」と「セットポジション」の2種類があります。
どちらを選択するかは、ボークのルールを理解する上で非常に重要です。
ワインドアップポジションは、主にランナーがいない場面で使われる、体を大きく使ったダイナミックな投球フォームです。
一方、セットポジションは、塁上にランナーがいる場面で使われる、よりコンパクトでクイックな投球が可能なフォームを指します。
ボークのルール適用における最大の違いは、セットポジションにのみ「完全な静止」が義務付けられている点です。
ワインドアップにはこの静止義務がありませんが、ランナーがいる状況でワインドアップを選択した場合でも、投球動作を途中で止めるなど他のボーク規定に抵触すれば、もちろん反則となります。
ランナーの盗塁を警戒する必要がある場面では、セットポジションを選択し、ルールに則った正しい動作を行うことが基本です。
投球動作でボークになる主なパターン
ピッチャーの投球に関連する一連の動作の中でも、ボークと判定されやすいパターンがいくつか存在します。
これらはバッターやランナーを欺く行為と見なされるため、厳しく判定されます。
投球動作の中止
ピッチャーは、一度投球動作を開始したら、必ず最後まで投げ切らなければなりません。
例えば、足を上げて振りかぶったにもかかわらず、途中で投球をやめてしまうとボークが宣告されます。
バッターのタイミングを外そうとして意図的に動作を止めると、反則行為となります。
バッターに正対しない投球
ピッチャーは、投球する際、バッターの方へ正対する必要があります。バッターがまだ打撃姿勢を整えていない、いわゆる「構え」が完了していないタイミングで投球を行うと、不意打ちと見なされボークとなります。プレーを再開する際は、ピッチャーとバッター双方の準備が整っていることが前提です。
ピッチャープレートに関する反則行為
マウンドの中心にあるピッチャープレート(投手板)の扱い方も、ボークの判定に大きく関わります。
ピッチャーはプレートに触れているか否かで、許される行為と許されない行為が明確に区別されます。
プレートを触れずに投球動作に入る
ピッチャーがプレートに触れずに、あたかも投球するかのような動作をするとボークになります。
これは、野手からの返球をプレート前で捕球し、そのまま投球モーションの真似事をしてしまうようなケースで起こり得ます。
ボールを持たずにプレートに立つ
隠し球を警戒する意味合いもあり、ピッチャーはボールを所持せずにピッチャープレートに立ったり、プレートをまたいで立ったりすることはできません。
このような行為は、バッターやランナーを混乱させる意図があると判断されます。
プレート上でボールを落とす
ピッチャーがプレートに触れている状態で、意図的であるかどうかにかかわらず、ボールを落としてしまうとボークが宣告されます。
ただし、プレートから足を外していれば、ボールを落としてもボークにはなりません。
具体例で学ぶ野球のボークとは?

- ランナーへの牽制で注意すべき点
- 捕手が原因でボークになるケース
- 遅延行為や反則投球も対象になる
- ボークを防ぐための練習方法と意識
- ボークになると試合はどうなるのか
- 結局、野球のボークとは何かを理解しよう
ランナーへの牽制で注意すべき点
ボークの中でも特に複雑で、試合で宣告されやすいのが牽制に関するルールです。
ランナーの盗塁を防ぐための重要なプレーですが、少しでもルールから逸脱すると即座にボークと判定されてしまいます。
偽投(ぎとう)のルール
偽投とは、塁に送球するふりだけをして実際には投げない行為です。
ピッチャーがプレートに触れたままの状態では、一塁と三塁に対して偽投を行うことは禁止されています。
もし一塁や三塁へ偽投をしたい場合は、必ずプレートから足を外してから行わなければなりません。
一方で、二塁への偽投はプレートに触れたままでも許可されています。
この違いは、二塁ランナーはピッチャーの動きが直接見えるため、偽投に騙されにくいと考えられているからです。
牽制時の足の踏み出し方
プレートに触れているピッチャーが牽制球を投げる際は、送球する塁の方向へ自由な足(軸足でない方の足)を真っ直ぐ踏み出して投げることが義務付けられています。
例えば、一塁へ牽制するのに三塁方向へ足を踏み出すような、身体の向きと送球方向が異なる投げ方はできません。
これはランナーを欺く行為と見なされ、厳しくボークが宣告されます。
ランナーがいない塁への送球
当然のことですが、ランナーがいない塁に対して牽制球を投げたり、偽投したりする行為は禁止されています。
ランナーを騙す意図がなくとも、ランナーの位置を勘違いしていた場合でもボークとなります。
塁 | 詳細 | 方向 |
---|---|---|
塁 | プレートに触れたままの偽投 | 牽制時の足の踏み出し |
一塁 | 禁止 | 塁の方向へ踏み出す |
二塁 | 許可 | 塁の方向へ踏み出す |
三塁 | 禁止 | 塁の方向へ踏み出す |
捕手が原因でボークになるケース
ボークはピッチャーだけの反則行為と思われがちですが、実はキャッチャーの動きが原因で宣告される特殊なケースも存在します。
具体的には、ピッチャーが投球する瞬間、キャッチャーがキャッチャーボックスから片足または両足を出してしまった場合にボークとなります。
このルールは、特に敬遠(故意四球)の際に、キャッチャーが少しでも早くボールを捕ろうとしてボックスの外に大きく逸れて構えるのを防ぐために適用されていました。
ただし、現在のプロ野球(2018年〜)や高校野球(2020年〜)では、監督が審判に意思を伝えるだけで敬遠が成立する「申告敬遠」制度が導入されています。
これにより、敬遠のためにボールを投げる必要がなくなったため、このキャッチャーが原因となるボークを見かける機会はほとんどなくなりました。
遅延行為や反則投球も対象になる
ピッチャーには、試合を円滑に進める責任もあります。
そのため、不必要に試合の進行を遅らせる行為もボークの対象となります。
例えば、ボールを受け取ってからなかなか投球サインの交換に応じなかったり、意味もなく牽制を繰り返したりする行為は遅延行為と見なされる可能性があります。
また、ボールに傷をつけたり、唾液などの異物をつけたりする反則投球も、ボークの一種として扱われます。
審判から警告を受けても止めない場合は、退場を命じられることもある厳しいルールです。これらの行為は、ランナーの有無にかかわらずペナルティの対象となります。
ボークを防ぐための練習方法と意識

ボークは無意識のうちに犯してしまうことも多く、単にルールを知っているだけでは防げません。
日頃からの反復練習と、試合中の高い意識が求められます。
フォームの確認を徹底する
ボークを防ぐ第一歩は、自身のフォームを客観的に把握することです。
鏡の前でセットポジションの静止や牽制動作を繰り返し確認したり、練習風景を動画で撮影してコーチと一緒に分析したりする方法が有効です。
特に、セットポジションでの静止が曖昧になっていないか、牽制時にしっかりと足を踏み出せているかは、入念にチェックするべきポイントです。
焦らない精神状態を保つ
ランナーに大きなリードを取られると、ピッチャーは「早く投げなければ」と焦りがちです。
しかし、この焦りが中途半端な動作を生み、ボークにつながることが少なくありません。
どのような場面でも冷静さを失わず、一つ一つの動作を確実に行うという強い意識を持つことが、なによりも大切になります。
マウンド上で深呼吸をするなど、自分なりのルーティンで心を落ち着かせる工夫も有効でしょう。
ボークになると試合はどうなるのか

ボークが宣告された場合、試合には大きな影響が及びます。まず、その投球は無効となり、バッターのボールカウントは変動しません。
そして、最も大きなペナルティは、塁上にいる全てのランナーに「安全進塁権」が一つ与えられることです。
これにより、一塁ランナーは二塁へ、二塁ランナーは三塁へ、三塁ランナーは本塁へ、それぞれ無条件で進塁できます。
満塁の場面でボークが宣告されれば、押し出しと同じ形で相手チームに1点が入ってしまいます。
ただし、例外もあります。ボークが宣告されたにもかかわらず、バッターがその投球を打ってヒットにし、バッターと全てのランナーが少なくとも一つ先の塁へ進んだ場合は、ボークは適用されずにプレーが優先されます。
結局、野球のボークとは何かを理解しよう

この記事では、野球の複雑なルールの一つであるボークについて解説しました。
最後に、ボークを理解するための重要なポイントをまとめます。
- ボークはピッチャーの反則行為
- ランナーがいる時にのみ宣告される
- 目的はランナーを不当な不利から守ること
- 宣告されると全ランナーが一つ進塁する
- 投球は無効でカウントは増えない
- 公認野球規則で13の項目が定められている
- セットポジションでの完全な静止が必要
- 静止時間に明確な秒数の規定はない
- 投球動作を途中で止めるとボーク
- プレート上でボールを落とすとボーク
- 一塁・三塁への偽投は禁止(プレート接触時)
- 二塁への偽投は許可されている
- 牽制時は塁の方向へ足を踏み出す
- ランナーのいない塁への牽制は禁止
- 申告敬遠の導入で捕手起因のボークは稀
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