プロ野球界で屈指の剛腕として知られる藤浪晋太郎投手。彼の投げるボールは、多くのファンを魅了してきました。
藤浪晋太郎の最速球速は160km/hを超え、そのポテンシャルについては誰もが認めるところです。しかし、彼のキャリアには常に「ノーコン」という言葉がついて回ります。
一体、藤浪晋太郎のノーコンの原因は何なのでしょうか。
また、ノーコンいつからその傾向が見られるようになったのか、疑問に思う方も多いはずです。藤浪晋太郎の暴投数に注目が集まる一方で、藤浪晋太郎の何がすごいのかという点も議論されます。
最近の試合では、中日が藤浪に対し特別な藤浪対策を講じましたが、それでも打ち崩すのは容易ではありませんでした。
この記事では、専門家の意見も交えながら、藤浪投手の制球難について、その背景を深く掘り下げて解説します。
- 藤浪がノーコンになった技術的・身体的・心理的な原因
- 制球が安定していた高校時代とのピッチングの違い
- ノーコンでも評価される圧倒的なポテンシャルと球威
- 中日ドラゴンズなどが実践する具体的な藤浪対策

藤浪 ノーコン問題の真相|3つの原因とは

- 高校時代は制球難とは無縁だった?
- フォーム変化による腕の遅れが原因か
- 196cmの長身がもたらす投球の難しさ
- 死球の恐怖心が招くメンタルの悪循環
- 藤浪晋太郎の暴投数で見る制球難データ
高校時代は制球難とは無縁だった?
現在の藤浪晋太郎投手のイメージからすると意外に思われるかもしれませんが、プロ入り前の彼は制球難とは無縁の存在でした。
大阪桐蔭高校時代には絶対的エースとして君臨し、2012年には甲子園で春夏連覇を達成するという偉業を成し遂げています。
甲子園での通算成績を見ても、防御率は1点台と非常に安定しており、四球率も低い水準を維持していました。
当時のピッチングスタイルは、力強いストレートとキレのある変化球を、自信を持って投げ込む姿が印象的です。このことからも、藤浪投手が元々コントロールに優れた投手であったことが分かります。
つまり、彼の「ノーコン」という課題は、プロ入り後に何らかの要因が重なって顕在化したものと考えられます。高校時代の完成された投球を知るファンにとっては、なぜ彼が制球に苦しむようになったのか、その変化が大きな謎として映るのです。
フォーム変化による腕の遅れが原因か
藤浪投手の制球難を語る上で、技術的な側面、特に投球フォームの変化は避けて通れないテーマです。多くの野球解説者が、彼のフォームの特性がコントロールのばらつきに繋がっていると指摘しています。
特に元ヤクルトスワローズの古田敦也氏や、元読売ジャイアンツの桑田真澄氏などは、「腕の位置のズレやタイミングの乱れ」が根本的な原因であるとの見解を示しています。
桑田氏は、藤浪投手の投球フォームが独特のインステップ気味である点に注目し、それによって腕が本来の位置よりも遅れて出てくる現象が起きていると分析しました。
この「腕の遅れ」が生じると、リリースポイントが毎球微妙にずれてしまいます。
結果として、ボールが指にかかりすぎて低めに叩きつけられたり、逆に高めに大きく抜けたりする球が増える傾向にあります。プロの世界で戦う中で、球速や球威を追い求めるあまり、高校時代に持っていたフォームのバランスが崩れてしまった可能性が考えられるのです。
196cmの長身がもたらす投球の難しさ

藤浪晋太郎投手の大きな武器の一つが、196cmという日本人離れした長身です。この恵まれた体格から投げ下ろされるボールは、打者にとって大きな脅威となります。しかし、その一方で、この長身こそが制球を安定させる上での難しさにも繋がっているという指摘があります。
元メジャーリーガーで投手コーチの経験も持つ高橋尚成氏は、身長が高い投手は手足が長いため、投球動作全体が大きくなる傾向にあると解説しています。
動作が大きくなると、身体の各パーツの動きを同調させ、毎回同じタイミングでリリースポイントを迎えることの難易度が格段に上がります。
藤浪投手の場合、わずかなフォームの乱れが、指先では大きなズレとなって現れてしまうのです。つまり、彼の長身は圧倒的なポテンシャルを生み出す源であると同時に、常に精密なコントロールを維持することを困難にする物理的な制約にもなっていると考えられます。
この大きな身体を完璧に使いこなすことが、彼にとって永遠のテーマなのかもしれません。
死球の恐怖心が招くメンタルの悪循環
技術的な問題や身体的な特性に加えて、藤浪投手の制球難にはメンタル面が大きく影響しているという見方も少なくありません。特に、キャリアの中で経験した数度のデッドボール、とりわけ頭部への死球が与えた心理的な影響は計り知れないものがあります。
過去に立て続けに危険なボールを投じてしまったことで、メディアやファンから大きな批判を浴びる時期がありました。
スポーツメンタルトレーナーの小林至氏は、このような状況が「投げるのが怖くなる」という心理状態を生み出すと分析しています。
「打者に当ててはいけない」という意識が過剰に強くなることで、腕を思い切り振ることへの恐怖心が芽生えます。この恐怖心が無意識のうちに投球フォームを微妙に狂わせ、かえって制球が乱れるという悪循環に陥っていた可能性が指摘されています。
これは、いわゆる「イップス」に近いメンタルブロックの状態とも言え、一度この状態に陥ると、抜け出すのは容易なことではありません。
藤浪晋太郎の暴投数で見る制球難データ

藤浪投手の制球難は、実際のデータにも表れています。特に、彼のキャリアにおける「暴投数」は、コントロールに苦しんでいる状況を客観的に示す指標の一つです。
プロ入り後、特に阪神タイガース在籍時代には、シーズンを通してリーグ最多の暴投を記録する年が複数回ありました。これは、彼の投球がいかに捕手の捕球範囲から外れるボールが多いかを示しています。参考として、阪神在籍時の主なシーズンの暴投数を以下に示します。
年度 | チーム | 登板 | 暴投 |
---|---|---|---|
2014年 | 阪神 | 25 | 10 |
2015年 | 阪神 | 28 | 13 |
2016年 | 阪神 | 26 | 12 |
2017年 | 阪神 | 11 | 9 |
2019年 | 阪神 | 1 | 3 |
これらのデータから、リリースポイントが安定せず、ボールが予期せぬ方向へ行ってしまう場面が多かったことがうかがえます。
もちろん、暴投の数だけで投手の全てを評価することはできませんが、彼が抱える課題の一端が数字として表れていることは事実です。
藤浪 ノーコンでも評価される理由と対策

- 藤浪晋太郎の最速球速と圧倒的な球威
- 専門家が語る藤浪晋太郎の何がすごいか
- 各球団が実践する具体的な藤浪対策
- 中日は藤浪をどう攻略しようとしたのか
- まとめ:藤浪 ノーコンは才能の裏返しか
藤浪晋太郎の最速球速と圧倒的な球威
制球難という課題がありながらも、藤浪晋太郎投手がなぜ多くの球団から高く評価され、ファンを魅了し続けるのか。その最大の理由は、他の投手にはない圧倒的なボールの威力にあります。
彼のストレートは、最速で160km/hを超えます。このスピードだけでも一級品ですが、彼のボールの真価は球速だけではありません。
196cmの長身から投げ下ろされる角度のあるストレートは、打者の手元でホップするような軌道を描き、驚異的な空振り率を誇ります。
たとえストライクゾーンから多少外れたとしても、その球威で打者を押し込み、ファウルや空振りを奪うことができます。
この「荒れ球」こそが、打者にとっては的を絞りにくく、大きな脅威となるのです。コントロールが安定しない日は苦しい投球になりますが、一度ゾーンの中でボールが暴れ始めると、手が付けられないほどの支配力を見せる。
この爆発的なポテンシャルが、彼の最大の魅力と言えます。
専門家が語る藤浪晋太郎の何がすごいか
藤浪投手のポテンシャルは、日本の野球解説者だけでなく、メジャーリーグの専門家からも高く評価されています。2023年にMLBへ挑戦した際にも、彼の持つ「球質の高さ」は注目を集めました。
アメリカの著名なスポーツ記者であるジョン・ヘイマン氏は、藤浪投手のボールについて「メジャー級の球質」と評する一方で、「コマンド(狙った場所に投げる能力)はAAAレベル」と、彼の課題と魅力を的確に表現しています。
これは、ボールそのものの威力や変化はトップレベルであるものの、それを自在に操る精度に課題が残るという意味です。
また、多くの専門家は、彼の才能はまだ完全に開花していないと見ています。データ分析や最新のトレーニング技術を駆使してフォームを数値的に管理し、リリースポイントを安定させることができれば、誰も手が付けられない絶対的な投手になる可能性があると期待されているのです。
つまり、現在の姿はまだ彼の完成形ではない、という点が専門家から見た際のすごさでもあります。
各球団が実践する具体的な藤浪対策

藤浪晋太郎投手という、圧倒的な球威と制球の不安定さを併せ持つ投手に対し、対戦する各球団は様々な対策を練ってきました。その攻略法は、いくつかの共通したパターンに分類できます。
一つ目は、「待球作戦」です。藤浪投手は立ち上がりに制球を乱す傾向があるため、打者は積極的に打ちにいかず、ボール球を見極めて四球を選ぶことを徹底します。
これにより、球数を投げさせてスタミナを消耗させると同時に、自ら崩れるのを待つという狙いです。
二つ目は、「左打者を並べる」戦術です。右投げの藤浪投手は、インステップ気味のフォームから、左打者の内角へ抜けるボールが多くなることがあります。そのため、打線に左打者を多く配置し、死球のリスクを避けつつ、甘く入ってきたボールを狙うという戦略です。
三つ目は、「早打ち」です。これは待球作戦とは逆の発想で、ストライクを取りに来る初球や早いカウントの甘いボールを積極的に打ちにいくというもの。
追い込まれると威力のあるボールや荒れ球で打ち取られる可能性が高まるため、その前に勝負を決めてしまおうという考え方に基づいています。
中日は藤浪をどう攻略しようとしたのか
前述の通り、各球団は藤浪投手に対して様々な対策を講じますが、その一例として中日ドラゴンズがとった戦略は非常に象徴的でした。
あるDeNAベイスターズ戦で、中日ベンチは藤浪投手を攻略するために、極端とも言える「左偏重オーダー」を組みました。
この日のスターティングメンバーは、遊撃手のロドリゲス選手を除いた8人をすべて左打者で固めるという徹底ぶりでした。
これは、藤浪投手のボールが左打者に向かってくる軌道を描きやすいというデータを重視し、内角の厳しいボールを避けながら、外へ逃げていく変化球や甘く入るストレートに的を絞らせる狙いがあったと考えられます。
しかし、結果として中日打線はこの試合で藤浪投手から得点を奪うことができず、7イニングを無得点に抑え込まれました。
この事実は、たとえセオリー通りの対策を講じたとしても、その日の藤浪投手のボールが走り始めると、容易には打ち崩せないという彼のポテンシャルの高さを改めて証明する形となったのです。
まとめ:藤浪 ノーコンは才能の裏返しか

この記事では、藤浪晋太郎投手の「ノーコン」問題について、その原因や背景、そして対策について多角的に解説してきました。最後に、本記事の要点を以下にまとめます。
- 藤浪晋太郎は高校時代、制球難とは無縁の世代を代表する投手だった
- プロ入り後のフォームの変化、特に腕の遅れが制球難の技術的な原因とされる
- 196cmの長身は、タイミングを合わせることを物理的に難しくしている
- 過去の死球体験が「当ててはいけない」という心理的重圧を生んだ可能性がある
- 阪神在籍時代には、シーズン最多暴投を複数回記録している
- 最大の魅力は160km/hを超えるストレートとその圧倒的な球威である
- 専門家からは球質はメジャー級と評価される一方、制球力に課題があるとされる
- 藤浪対策として、待球作戦や左打者を並べる戦術が一般的である
- 中日ドラゴンズはスタメン8人を左打者で固める徹底した対策を講じた
- しかし、その対策をもってしても打ち崩すのは容易ではない
- 制球難は、彼の規格外のポテンシャルと表裏一体の関係にある
- フォームの安定など課題を克服すれば、誰も手が付けられない投手になる可能性がある
- 彼の「ノーコン」は単純な欠点ではなく、大器である証拠とも考えられる
- 多くのファンが、その才能が完全に開花する日を待ち望んでいる
- 藤浪投手の今後の活躍と再起に大きな期待が寄せられている
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