プロ野球の世界で、低迷するチームを再建し、選手たちを覚醒させる指導者は、ファンにとってまさに「救世主」のような存在です。
北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督も、まさにそのような指導者の一人として注目を集めています。彼は就任以来、独自の哲学と指導法で、多くの選手たちの潜在能力を開花させてきました。
かつて名将・野村克也さんが「野村再生工場」と呼ばれたように、今や新庄剛志監督率いる日本ハムは「覚醒工場」とも称されています。
この記事では、新庄剛志監督が就任してから2年間で覚醒してきた選手たちを、その秘訣と共にご紹介します。
伸び悩む若手たちが進化を遂げた軌跡に迫り、それぞれの選手にフォーカスして見ていきましょう。

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新庄剛志監督が目指す「再生工場」の真髄とは?


2022年から北海道日本ハムファイターズの指揮を執る新庄剛志監督は、就任当初から「優勝を目指さない」と宣言し、育成に重きを置く独自のチーム作りを掲げています。
この「再生工場」とは、かつて名将・野村克也さんが「野村再生工場」と呼ばれたように、伸び悩んでいたり、他球団でくすぶっていたりした選手たちの潜在能力を最大限に引き出し、新たな才能を開花させる新庄剛志監督独自の育成システムを指します。
選手個々の可能性を信じ、既成概念にとらわれないアプローチで、本来持っている能力を覚醒させることを目指しています。



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従来の育成論とどう違う?新庄流指導法の独自性
新庄剛志監督の指導法は、従来の画一的な育成論とは一線を画します。
技術指導だけでなく、選手のメンタル面に深く踏み込み、時には厳しい言葉で、またある時には愛情のこもった言葉で、選手の意識改革を促します。
例えば、清宮幸太郎選手にダイエットを提案したり、田中正義選手に笑顔で投げることを勧めたりと、それぞれの選手に合わせたパーソナルなアプローチが特徴です。
さらに、固定観念にとらわれず、選手の可能性を信じて抜擢する柔軟な起用も新庄流の大きな独自性と言えるでしょう。
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再生工場は本当に機能している?具体的な成果と評価
就任1年目の2022年、そして2年目の2023年と、チームはパ・リーグ最下位に終わりました。
しかし、その一方で多くの選手たちが覚醒し、目覚ましい成長を遂げています。
特に、これまでなかなか芽が出なかった選手たちが、新庄剛志監督の指導によって大きく飛躍したことは、再生工場が着実に機能している証拠と言えます。
この具体的な成果は、次項以降で紹介する選手たちの活躍を見れば明らかであり、今後チームが上位進出を目指す上で欠かせない要素となっています。
新庄再生工場で「覚醒」した野手4選!成功事例と秘訣
ここでは、新庄剛志監督の指導によって打撃や守備で覚醒し、チームの攻撃を牽引する存在となった野手4名をご紹介します。
彼らがどのようにしてその才能を開花させたのか、具体的なエピソードを交えながら深掘りしていきます。
清宮幸太郎選手はなぜ打撃が開花理由
少年時代から「怪物スラッガー」として注目を集め、高校通算111本塁打を記録した清宮幸太郎選手は、2017年のドラフト会議で7球団から1位指名を受け、鳴り物入りで日本ハムに入団しました。
しかし、プロ入り後は怪我や不調に悩まされ、なかなか期待通りの活躍ができませんでした。そんな清宮幸太郎選手に転機が訪れたのは、2021年オフの新庄剛志監督就任でした。
新庄剛志監督は、キャンプで清宮幸太郎選手に「ちょっとデブじゃね?痩せない?」とストレートな言葉でダイエットを提案。
当初は戸惑いを見せた清宮幸太郎選手でしたが、新庄剛志監督の「今もそんなに打球飛んでないよ」という土壇場ストレートな言葉に奮起し、約10kgの減量に成功しました。
この減量によって、清宮幸太郎選手は動きやすさを実感し、2022年にはキャリアハイとなる18本塁打を記録。2023年は怪我もあり本塁打数は減ったものの、打率と出塁率を大幅に向上させ、中心選手としての素質を開花させました。
新庄剛志監督は、ダイエット後も清宮幸太郎選手に厳しい言葉をかけ続け、更なる成長を促しており、まさに「雨と鞭」の指導が清宮幸太郎選手の覚醒に繋がったと言えるでしょう。
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万波中正選手の大覚醒:持ち味を最大限に引き出す指導とは
抜群の身体能力を誇り、「北のロマン砲」と称される万波中正選手も、新庄再生工場の恩恵を受けた一人です。
高校時代からその長打力には注目が集まっていましたが、プロ入り後はバットに当たる確率の低さに苦しんでいました。
新庄剛志監督は、2022年の春季キャンプで万波中正選手の打撃を見た際、「ヘッドスピードはメジャーリーガーと一緒」と評価しつつも、「ボールのうつらを削り取るようなイメージで打て」と具体的なアドバイスを送りました。
また、体が縮むような打撃フォームに対しては「もぐり打法」と指摘し、「立ってそのまま打てばいいじゃん」と目線を上げる指導を行いました。
「もぐり打法」は、野球のスラングで、バントのように構えて、ストライクゾーンから外れたボールをファウルにする技術のことです。
特に、ツーストライクに追い込まれた状況で、相手投手を消耗させ、四球での出塁を狙う戦術として用いられます。
さらに、荒削りだった外野の守備に対しても、一切打球に合わせることなくチャージしていくという革新的な考え方を伝え、守備力向上にも貢献しました。
これらの指導により、万波中正選手は2023年に打率.265、25本塁打、74打点と大ブレイクを果たし、オールスターにも選出されるなど、日本ハムの主砲へと成長しました。
新庄剛志監督は、万波中正選手を高く評価し、背番号「1」の継承にも前向きな姿勢を見せています。
松本剛選手が語る、新庄監督からの影響と変化
長年、怪我や不調に苦しみ、レギュラー定着が叶わなかった松本剛選手も、新庄再生工場で覚醒した選手の一人です。
2021年オフに新庄剛志監督が就任し、「レギュラーは白紙、全員が横一線」と明言したことで、松本剛選手の中に「スイッチが入った」と言います。
2022年の開幕戦で一番打者として抜擢されると、その期待に応えるようにヒットを量産。打率3割5分を超えるハイアベレージで首位打者争いをリードしました。
7月に左膝の骨折というアクシデントに見舞われましたが、新庄剛志監督は「来年狙えばいいとかそういう話ではない。今年なんですよ」と松本剛選手の早期復帰を強く望み、DHや代打で出場機会を確保しました。
その結果、松本剛選手は規定打席に到達し、打率.347で首位打者のタイトルを獲得しました。
新庄剛志監督は、松本剛選手に対して「思いきり行く場面は思いきり行っていい」「バントなんてしなくていい」と打席でのメンタル面にも良い影響を与え、思い切りの良いプレーを引き出しました。
郡司裕也選手に期待される役割:打撃開花の可能性
高校、大学とエリートコースを歩んできた郡司裕也選手は、捕手ながら打力も兼ね備えた選手として中日ドラゴンズに入団しました。
しかし、中日時代はなかなか出場機会に恵まれず、打撃力を生かすために外野やファーストにも挑戦するも、持ち味を発揮できませんでした。
そんな郡司裕也選手に転機が訪れたのは、2023年6月の日本ハムへのトレード移籍でした。
新庄剛志監督は、移籍してきた郡司裕也選手に対し、「どの球団でも僕のところに来たら目覚めさせますよ」「ここに来たらチャンスも増えるだろうし」と期待を寄せました。
さらに、新庄剛志監督から「この気持ちを忘れずに10月まで走りきろ。年俸4000万円を目指そうぜ」という熱いDMを受け取ったことで、郡司裕也選手のモチベーションは最高潮に達しました。
移籍後、郡司裕也選手はプロ初となる猛打賞を記録し、さらに2試合で7打点を上げるなど、日ハム新時代のスラッガーを予感させる活躍を見せました。
来シーズンのポジションは未定ながらも、新庄剛志監督のもとで更なる打撃開花が期待されます。
再び輝きを取り戻した投手3選!再生工場が投手にもたらしたもの
次に、新庄剛志監督の指導によって、マウンドで再び輝きを放つようになった投手3名に焦点を当てます!
メンタル面、投球フォーム、そして起用法といった様々な側面から、彼らの覚醒の背景を探ります。
齋藤友貴哉投手の変貌:新庄監督が引き出した潜在能力
かつて阪神タイガースに在籍し、最速153kmの剛速球を武器とするも、制球難に苦しんでいた齋藤友貴哉選手も、新庄再生工場で覚醒した一人です。
2022年オフに日本ハムへ移籍すると、新庄剛志監督は齋藤友貴哉選手に対し、技術面ではなくメンタル面でのアドバイスを送りました。
具体的には、春季キャンプで「力んでも良くないので笑うぐらいで投げたらいいのでは」という言葉をかけ、マウンド上で笑顔で投げる「スマイル投法」を実践させました。
この指導により、齋藤友貴哉選手は力みが消え、本来の剛速球をストライクゾーンに投げ込めるようになり、四球から自滅する悪癖も解消されました。
2023年には、開幕から中継ぎとして好投を続け、守護神を務めていた石川直也選手が離脱すると、新守護神に指名され、プロ初セーブを記録しました。
2024年には自己最多の25試合に登板し、防御率1.71という好成績を残すなど、まさに新庄剛志監督の言葉が齋藤友貴哉選手の潜在能力を引き出し、劇的な変貌を遂げさせました。
田中正義投手の復活劇:新庄流メンタルケアと技術指導
2016年のドラフト会議で5球団が競合した「北のジャスティス」こと田中正義選手は、ソフトバンクに入団後、度重なる怪我に悩まされ、プロ初勝利すら挙げられずにいました。
しかし、2023年1月に近藤健介選手の人的補償として日本ハムへ移籍したことで、田中正義選手の野球人生は大きく動き出しました。
新庄剛志監督は、田中正義選手に対し、技術指導よりもメンタル面でのケアを重視しました。春季キャンプでは「力んでも良くないので笑うぐらいで投げたらいいのでは」とアドバイスを送り、マウンドで笑顔を見せることで、田中正義選手の緊張をほぐしました。
さらに、6月9日の阪神タイガース戦では、緊迫した場面でマウンドに駆け寄り、「全部まっすぐで行け。ホームランを打たれていいから後は笑っていけ」と背中を押す言葉をかけました。
これらの新庄剛志監督からのアドバイスと、守護神という新たなポジションが、田中正義選手の才能を開花させました。最終的に2023年は47試合に登板し、25セーブを記録するなど、まさに復活を印象付けるシーズンとなりました。
鈴木健矢投手の安定感:なぜ計算できる投手になったのか?
社会人野球を経て日本ハムに入団したサイドスローの投手、鈴木健矢選手は、プロ入り後なかなか結果を残せずにいました。
そんな鈴木健矢選手に新庄剛志監督は、2022年の春季キャンプで突然「見づらくしないと」とアンダースローへの転向を勧めました。
アンダースローとは、野球などの球技で、投手がボールを投げる際に、腕を水平より下から出す投げ方のことです。下手投げとも呼ばれ、潜水艦のように見えることからサブマリン投法とも呼ばれます。
特殊なフォームへの転向に戸惑いがあったものの、鈴木健矢選手は新庄剛志監督の言葉を信じてアンダースローへの着手を決意。
さらに、投球ごとの間合いの変化やスーパークイックなど、独自のテクニックも取り入れました。
この転向が功を奏し、鈴木健矢選手は2022年にプロ初勝利を挙げ、先発での白星も記録するなど、19試合の登板で防御率2.84と安定した成績を残しました。
2023年も好調を維持し、開幕から中継ぎとして活躍。一時は体重が減少するなど体の負担もありましたが、シーズン終盤には持ち直し、中継ぎとして安定感のあるピッチングを見せました。
新庄剛志監督の斬新な発想と、それを受け入れる鈴木健矢選手の柔軟性が、計算できる投手へと成長させたと言えるでしょう。
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